消防法の内装制限に抵触しない建物を建てるためには、なにが大切なのかと考えている方に向けて、内装制限について解説する記事です。
建物に対する法令は条件が細かく、消防法・建築基準法の双方を考えていると、どのように建ててよいのかわからなくなるでしょう。
消防法と建築基準法の基準は異なり、いずれにも法令に適合した問題のない建物を建てなければなりません。
そこで今回の記事では、消防法の内装制限について解説します。
参考にしていただければ、内装制限についての基礎知識を備え、法律を遵守して建築することが、できるはずです。
消防法による内装制限について
消防法では「内装制限」が設けられています。
内装制限とは万が一の火災の際、居室や通路の壁体、天井材への炎の立ち上り時間を抑えて、初期消火や避難の時間を確保するものです。
内の炎は壁から天井へと拡大し、時間の経過とともに煙と可燃性ガスが室内に充満して、一挙にフラッシュオーバー(爆燃現象)が発生して、火災は一挙に拡大します。
内装制限は有効な初期消火と避難の時間を確保するとともに、フラッシュオーバーの時間を遅らせる意味合いもあります。
具体的な条件について見てみましょう。
内装材には不燃材、準不燃材、難燃材の区分があり、建物用途により細かく定められています。
- 通常の火災において、基準を満たす防火材料が使われていること
- 国土交通大臣が定めた構造方法・認定材料であること
- 加熱されても燃えにくい材料が使われていること
- 避難経路の通路が確保されていること
- 防火材料の設定表示をすること
主な条件は上記のとおりです。
基本的に燃えにくい材料を使うことが求められていて、その他、安全な避難経路が確保されていることなどが条件となります。
火災の際の燃えやすさは、建物に使用されている材料によって異なります。
また内部にいる方々の安全な避難経路を確保することは、人命の保護に直結することです。
そのため消防法では火災発生時の安全を守るために、内装制限を設けています。
建築基準法との違い
消防法と建築基準法との違いは、範囲の違いにあります。
建築基準法にも内装制限が存在します。
しかし「床から高さ1.2メートルの範囲内」は制限の対象になっていません。
制限の対象となるのは学校や体育館、火気を使用する部屋だけです。
しかし消防法では床から高さ1.2メートルの範囲内であっても、内装制限の対象となります。
つまり建築基準法では床面から1.2メートルの高さまでは適用されませんが、消防法では床面から立ち上がる壁体のすべてが、内装制限の対象となることが大きな違いです。
消防法の内装制限の対象となる建物
消防法には内装制限の考え方がありますが、対象となる建物は限られています。
すべての建物が消防法による内装制限の対象となるわけではありません。
それではどのような建物が対象となるのでしょうか?
対象となる4種類の建物について具体的に解説します。
ご紹介するのは、「特殊建築物」「大規模建築物」「火気使用室」「無窓の居室」です。
建物1:特殊建築物
「特殊建築物」とは、不特定多数の人が集まる建物、火災の危険性が高い建築物のことを指します。
具体例は次のとおりです。
【特殊建築物の具体例】
- 劇場、映画館、演芸場、遊技場、観覧場、公会堂、集会場
- 病院、診療所、児童福祉施設
- ホテル、旅館、民宿、共同住宅
- 遊技場、物品販売店舗
- 百貨店、展示場、スーパーマーケット、カフェ、バー、飲食店
- 公衆浴場
- 自転車車庫、自動車修理工場
- 映画スタジオ、テレビスタジオ
- 地階に劇場、病院、ホテル、飲食店、物品販売店、などの施設を備える建物
- 住宅の調理室、住宅以外の調理室、乾燥室、ボイラー室など
それぞれ施設ごとに耐火建築物や準耐火建築物に応じての床面積が定められています。
以上のような建築物では、消防法による内装制限を十分に確認したうえでの建築計画建設が求められるでしょう。
多くの人が集まる施設を建築する際には、特殊建築物に該当するため消防法上の内装制限を確認してください。
建物2:大規模建築物
消防法による内装制限対象となる建物として、大規模建築物もあげられます。
大規模建築物は床面積で測られ、階数によって次のように定められているものです。
【大規模建築物の具体例[3]】
- 3階建ての場合:延床面積500平方メートル以上を超えるもの
- 2階建ての場合:延床面積1,000平方メートル以上を超えるもの
- 1階建ての場合:延床面積3,000平方メートル以上を超えるもの
もし大規模建築物に該当するのであれば、不燃材料、準不燃材料、難燃材料を使うことが求められます。
新しく建物を建てるのであれば、大規模建築物の条件に該当するかどうかを確認して、法令に適合する措置をとらなければなりません。
また、内装制限をすることにより、屋内消火栓等が適用される基準となる延面積が、緩和される場合もあるので注意しましょう。
建物3:火気使用室
続いては火気使用室です。
火気使用室では火気を使用することから火災のリスクが高く、消防法における内装制限の対象となります。
たとえば厨房が設置されている飲食店、浴室のある設備が対象です。
特に調理器に関してはさらに制限が多くなります。
しかしIHクッキングヒーターは火を使わない調理器具であるため、火気使用室の対象とならないこともあるでしょう。
飲食店を建設する場合は、火災発生のリスクが高いことを意識しなければなりません。
そのうえで消防法に適合する内装制限を重視しながら、建設計画を進めるようにしてください。
建物4:無窓の居室
最後は無窓の居室です。
窓があることは建築基準法を満たすための条件であるため、窓がない居室があれば消防法の内装制限対象となります。
もし窓があったとしても、基準を満たさないようであれば対象とされるでしょう。
たとえば次のような無窓の居室となります。
【無窓の居室の具体例】
- 窓による採光がない
- 窓による換気ができない
- 窓による排煙ができない
- 窓による避難ができない
4種類の無窓居室をあげましたが、消防法における内装制限の対象となるのは「窓による排煙ができない居室」です。
万が一の火災の際に煙を外に出すことができず、人命の安全に支障をきたします。
そのため排煙ができない無窓居室においては、次のような内装制限が設けられています。
【無窓居室の内装制限】
- 天井の高さが6mを超える場合であること
- 居室が50平方メートル以上の面積であること
- 天井から80cm以内の解放できる窓が居室面積の1/50未満であること
排煙基準は上記の3つのポイントから測られます。
排煙ができない無窓の居室においては、壁と天井のいずれにも不燃材料、準不燃材料を使われなければなりません。
内装制限の違反に対する罰則
消防法における内装制限を守らないと、罰則が課されることがあります。
違反した場合は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金と、決して軽くはありません。
さらに法人による違反であった場合は、罰金が3,000円以下に増額されます。
内装制限違反に対する罰則の対象者は、建物の所有者・占有者・管理者です。
個人はもちろん、法人でも同様の基準で罰則が課されるため、建物を立てる際には内装制限を遵守してください。
内装制限が緩和となる場合
消防法における内装制限は、違反した際に罰則も設けられている厳しいものです。
しかし内装制限が緩和される場合もあります。
緩和策1:スプリンクラーと排煙設備の設置がある場合
内装制限が緩和となるひとつめは、スプリンクラーと排煙設備が設置された場合です。
法令で義務となるスプリンクラーが緩和されるのでは無いので注意してください。
スプリンクラーと排煙設備が設置された場合は、延焼の消火効果と建物内に充満する煙を屋外に排出できるため、建物内にいる人々の避難が容易になります。
スプリンクラーと排煙設備の設置により、内装制限の適用が除外となります。
その他にもスプリンクラーの代替として自動式消火設備を備えていれば対象外となります。
たとえば次のような設備が該当します。
【内装制限の適用対象外となる自動式消火設備】
- スプリンクラー設備
- 水噴霧消火設備
- 泡消火設備
- その他類似する設備
- 上記4つの条件を満たしておりさらに排煙設備を設けたもの
スプリンクラーは一定の温度になると、天井のヘッドから自動的に水を噴霧して消火をする設備です。
水噴霧消火設備、泡消火設備も同様ですが、内装制限を緩和する目的で設置すると役立つでしょう。
緩和策2:天井を6メートル以上にする
天井を6メートル以上にするのも方法のひとつです。
消防法における内装制限では、無窓居室が対象になると解説しました。
しかし天井が6メートル以上であれば、窓がない居室でも対象外となります。
高い天井が煙を蓄煙するため、煙の充満と降下する時間を遅らせる効果があります。
しかし、建物の用途によっては、高天井にスプリンクラー設備が必要となる場合があるため、十分な確認が必要となるので注意してください。
緩和策3:天井の素材に準不燃以上の防火素材を使う
最後にご紹介する緩和策は、天井に準不燃以上の防火材料を使うことにより、壁のみが内装制限の適用から除外されます。
建物の種類を問わず、消防法の内装制限をクリアするには天井か壁、もしくは両方に燃えにくい材料を使わなければなりません。
難燃剤(一部の用途のみ)、準不燃材料・不燃材を使うことにより、内装制限を緩和することができます。
そのためもし内装制限の対象となる建物を建てたいのであれば、天井に準不燃以上の防火材料を使うことにより、建築の自由度も増すため、防火素材を使えるならおすすめの方法ですが、火災報知設備、スプリンクラー設備などと兼ね合いもあるため、注意してください。
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内装制限の対象建築物の判定方法
消防法における内装制限には、種類によって対象となる建築物とならない建築物があることを解説しました。
そこで内装制限の対象になるかどうか、事前に判定方法を知っておきたいものです。
最後にご紹介するのは、内装制限対象建築物の判定方法です。
特殊建築物である場合と特殊建築物でない場合の2パターンでご紹介します。
内装制限の対象となるのか判断したい方は、次の基準に従って判定してください。
特殊建築物の場合
特殊建築物である場合は、設けられている基準より延床面積が広いかどうかが判定の基準となります。
基準は建物種類によって変わるため、建築したい建物の構造と用途ごとの面積を確認しましょう。
もし基準より広ければ内装制限の対象となります。
建築前に確認して、内装制限の対象外となる面積で建築するのもひとつの方法でしょう。
特殊建築物ではない場合
特殊建築物でない場合は、大規模建築物・火気使用室・無窓居室に該当する場合のみ消防法による内装制限の対象です。
該当しないようであれば、内装制限を気にする必要はありませんが、建築基準法による内装制限もあるため注意してください。
ただし飲食店で火気を使用するなら、ほぼ該当すると考えてください。
特殊建築物に該当しない場合は、上記の3つの条件に当てはまるかを確認しましょう。
建物を建設するなら消防法の内装制限を遵守して
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、消防法における内装制限についてご理解いただけたと思います。
に違反すると、法人では最大3,000万円もの罰金を請求されることがあります。
建物の種消防法類を消防法と照らし合わせて、法律を遵守しながら建設してください。
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