営業倉庫で危険物は保管できる?保管可能な種類・法改正のポイントを解説

営業倉庫で危険物は保管できる?保管可能な種類・法改正のポイントを解説

危険物の保管は、専用の危険物倉庫が必要といった認識が一般的でした。

しかし、2018年の倉庫業法施行規則の改正以降は、一定条件を満たす場合に限り、営業倉庫でも危険物を保管できるケースが認められています。

本記事では、営業倉庫で危険物を扱える法的な位置づけや保管可能な種類、注意点を解説します。

危険物保管庫の導入や、適正な保管方法を検討する際の参考にしてください。

営業倉庫でも危険物を扱える

現在の制度では、一定の条件を満たす場合に限り、営業倉庫であっても危険物の保管が可能です。

対象となるのは、下記のとおりです。

  • 消防法の指定数量未満の危険物
  • 高圧ガス保安法に該当する高圧ガス

少量の危険物を含む製品については、必ずしも危険物倉庫を設ける必要がなくなりました。

ただし、営業倉庫での保管が無条件に認められるわけではありません。

保管数量や物質の性状、保管方法に応じて、消防署への届出や安全対策が求められます。

法改正の詳細

営業倉庫における危険物保管の取り扱いが整理された大きな節目が、2018年6月に施行された倉庫業法施行規則等の改正です。

従来、倉庫業法上の運用では、消防法上の許可が不要な数量であっても、危険物に該当する物品は危険物倉庫での保管を前提とする整理がなされていました。

しかし、リチウムイオン電池やエアゾール製品など、少量の危険物を含む製品の流通が拡大したことを背景に、実態に即した制度運用へ見直しが行われました。

この改正により、消防法で定める指定数量未満の危険物については、所定の安全措置を講じることを条件に、営業倉庫での保管が可能であると明確化されています。

なお、指定数量未満であっても、少量危険物として市町村条例による届出や技術基準が課される場合があります。

実際の運用にあたっては、所轄消防署や自治体の規定を確認することが欠かせません。

営業倉庫とは

営業倉庫とは、物流や在庫管理の現場において、他社や取引先から預かった貨物を保管することを事業として行う施設です。

倉庫業法に基づく登録制度のもとで、運営されています。

営業倉庫は、保管する物品の性質や量に応じて適切な設備・運用が必要です。

危険物の保管を検討する際には、法的な位置づけを正しく理解しておくことが求められます。

自家用倉庫との違い

営業倉庫は、他社や顧客の貨物を有償で預かり、保管業務を行う施設です。

倉庫業法に基づいて、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。

倉庫の種類に応じた施設基準や管理体制の整備、倉庫管理主任者の選任など、法令で定められた要件を満たさなければなりません。

一方、自家用倉庫は、事業者が自社の製品や原材料などを保管するために使用する倉庫です。

原則として、他社の貨物を預かることを目的としておらず、倉庫業法上の「倉庫業」には該当しません。

この点が、営業倉庫との明確な制度上の違いです。

危険物倉庫との違い

営業倉庫と危険物倉庫は、保管対象と適用される法令体系において明確に区別されています。

営業倉庫は、主として一般物品を対象とし、倉庫業法に基づく施設・運用基準が適用される倉庫です。

一方で危険物倉庫は、危険物や高圧ガスを専門的に保管することを目的とした施設です。

消防法や高圧ガス保安法などの規定に基づいています。

指定数量以上の危険物を取り扱うことを前提としているため、防火・防爆・漏えい防止などに関する設備基準は極めて厳格に定められています。

近年の制度見直しによって、指定数量未満の危険物については、条件付きで営業倉庫でも保管が可能となりました。

ただし、大量保管やリスクの高い物質については、引き続き危険物倉庫での保管が原則とされています。

営業倉庫の種類

営業倉庫は、保管する物品の性質や保管方法に応じて、倉庫業法施行規則により複数の種類に区分されています。

貨物の品質保持や安全確保を目的として、必要な設備や構造要件を明確にするためです。

ここでは、営業倉庫の種類ごとに特徴を解説します。

参考:国土交通省|営業倉庫の種類

普通倉庫

普通倉庫は、営業倉庫の中でももっとも一般的な区分です。

日用品や工業製品、原材料など、幅広い物品の保管に対応しています。

倉庫業法上は施設の構造や性能に応じてさらに細かく分類されており、防火性・防湿性・耐火性能などの違いによって、保管できる物品の範囲が整理されています。

普通倉庫に含まれるおもな区分と、それぞれの特徴を、下表に整理しました。

区分おもな特徴・施設要件
1類倉庫防火性・防湿性・耐火性能など、普通倉庫の中で厳しい設備基準を満たす建屋
2類倉庫耐火性能は求められず、防火・防湿性能に制限がある
3類倉庫防水・防湿・遮熱・耐火・防鼠措置を備えない構造
野積倉庫屋外で保管塀・柵などの防護設備が必要
貯蔵槽倉庫サイロ・タンク等で、ばら貨物や液体を保管
危険品倉庫消防法・高圧ガス保安法等に基づく専用施設防火・防爆・漏えい防止設備が必須

普通倉庫は本来、一般物品の保管を前提とした倉庫であり、危険物の大量保管を目的とした施設ではありません。

普通倉庫の中で危険物保管が検討対象となるのは、設備基準の厳しい1類倉庫に限られます。

一方で、指定数量以上の危険物を保管する場合や、火災・爆発リスクが高い物質を扱う場合には、危険品倉庫の設置が原則となります。

水面倉庫

水面倉庫は、原木などの木材を水面に浮かべた状態で保管することを目的とした、特殊な形態の営業倉庫です。

「水面貯木庫」とも呼ばれ、木材を水に浸すことで乾燥や割れ、品質劣化を防ぎながら保管できる点が特徴です。

建屋内で貨物を保管する一般的な倉庫とは異なり、河川や港湾などの水域を利用して保管を行います。

そのため、倉庫業法に基づく管理や防護措置が求められます。

具体的な条件は、下記のとおりです。

  • 保管区域を明確に区分すること
  • 第三者の立ち入りを防ぐための柵や標識を設置すること

営業倉庫には、用途に応じた多様な形態があることを理解しておきましょう。

冷蔵倉庫

冷蔵倉庫は、低温環境での保管が必要な物品を対象とした営業倉庫です。

おもに、生鮮食品・冷凍食品・水産加工品などの保管に利用されます。

常時一定温度以下を維持できる冷却設備や、適切な温度管理体制を備えていることが必須です。

温度帯については、倉庫業法関連の告示により区分が定められており、保管する物品の性質に応じた温度管理が求められます。

一方で、冷蔵倉庫は品質保持を主目的とした構造です。

引火性物質や可燃性ガスなどの危険物の保管を前提とした設備にはなっていません。

危険物を含む貨物を扱う場合には、冷蔵倉庫としての適否や、追加で必要となる法令対応を慎重に確認する必要があります。

トランクルーム

トランクルームは、個人が所有する物品を預かり、保管サービスとして提供することをおもな目的とした施設です。

下記のように、家庭内で保管しきれない物品がおもな対象です。

  • 家具
  • 家電
  • 書類
  • 美術品

トランクルームは、営業倉庫とは異なる施設に見えるかもしれません。

しかし倉庫業法に基づき、一定の基準を満たした施設については「認定トランクルーム」に位置づけられます。

認定トランクルームは、保管環境や防犯・セキュリティ体制といった面で、一定の信頼性が確保されている点が特徴です。

ただし、一般消費者の利用を想定しており、危険物や業務用資材の保管には原則として適していません。

営業倉庫で保管できる危険物の種類

営業倉庫で取り扱いが認められている危険物は、消防法や高圧ガス保安法により、保管できる種類や数量が明確に制限されています。

消防法では、危険物をその性状に応じて第1類から第6類に分類し、それぞれ「指定数量」を定めています。

指定数量を超える場合は危険物施設としての規制対象となり、許可・基準を満たした施設での貯蔵等が必要となるのが一般的です。

営業倉庫(おもに一類倉庫)で検討対象となる危険物の区分と代表例は、下記のとおりです。

類別危険物の性状代表的な物質例
第1類酸化性固体塩素酸カリウム
第2類可燃性固体硫黄
第3類自然発火性・禁水性物質黄りん
第4類引火性液体ガソリン
第5類自己反応性物質ニトロセルロース
第6類酸化性液体過酸化水素

これらの 指定数量未満の危険物については、一定の安全対策を講じることを前提として、営業倉庫(一類倉庫)での保管が認められるケースがあります。

ただし、指定数量未満であっても、一般的には下記のような対応が求められます。

  • 市町村条例による「少量危険物」規制への対応
  • 所轄消防署への届出や、条例に基づく技術基準の遵守
  • 倉庫の構造・設備・管理体制の適合確認

そのため、「指定数量未満=無条件で保管可能」ではないという点には十分注意が必要です。

営業倉庫で危険物の保管を検討する際は、法令だけでなく、自治体条例や消防署の指導を含めた総合的な判断が不可欠といえます。

営業倉庫で危険物を保管する際の建設・設備基準

営業倉庫で危険物を保管する場合、通常の営業倉庫としての要件を満たすだけでは十分とはいえません。

ここでは、下記の項目ごとに解説します。

  • 営業倉庫として必要な基本基準
  • 危険物特有の追加設備
  • 標識掲示・識別表示などの管理体制

詳しく見ていきましょう。

営業倉庫として必要な基本基準

営業倉庫は、倉庫業法に基づき一定の構造・設備基準を満たした施設でなければなりません。

代表的な要件は、下記のとおりです。

  • 建築基準法に適合した建屋構造であること
  • 防犯上有効な出入口や施錠設備を備えること
  • 適切な照明や開口部の保護措置が講じられていること

また、倉庫の種類に応じた施設要件を満たし、適正な管理を行うために倉庫管理主任者を選任することも義務付けられています。

これらの基準は、保管物の安全確保と第三者への影響防止が目的です。

危険物特有の追加設備

危険物を営業倉庫で保管する場合、基本基準に加えて、物質の性状に応じた追加設備が必要となるケースがあります。

たとえば液体の危険物では、漏えい時の拡散を防止する観点から、不浸透床や貯留設備の設置が必要とされることもあります。

また、温度変化に敏感な物質については温度測定装置、静電気による着火リスクが想定される環境では除電設備の導入が検討の対象です。

これらの具体的な要件は、市町村条例で定められることがあり、内容は地域ごとに異なります。

そのため、計画段階から所轄消防署と協議し、求められる設備や対応範囲を整理しておくことが重要です。

標識掲示・識別表示などの管理体制

危険物を取り扱う営業倉庫では、設備面だけでなく、管理体制の整備も欠かせません。

代表的なのが、危険物取扱場所であることを明示する標識や掲示物の設置です。

作業者や立入者が危険性を即座に認識でき、事故防止につながります。

また、保管物の種類や数量を把握できる管理記録の整備や取扱手順の明文化、緊急時対応の共有なども重要な要素です。

これらは法令で明確に義務付けられていなくても、実務上は消防署から指導対象となることがあります。

営業倉庫で危険物を保管するメリット

営業倉庫を利用して危険物を保管することで、法令対応や運用面において一定の利便性が得られます。

とくに指定数量未満の危険物を取り扱う場合、下記のような点がメリットとしてあげられます。

  • 法令対応や安全管理を倉庫側に任せやすい
  • 危険物倉庫を新設するよりコストを抑えられる
  • 指定数量未満であれば導入のハードルが低い
  • 保管量の増減に柔軟に対応できる

これらの特徴から、少量の危険物を扱う事業者にとっては、効率的かつ現実的な選択肢となるでしょう。

営業倉庫で危険物を保管するデメリット

一方で、営業倉庫に危険物の保管を委託する場合には、いくつかの制約が生じる点も理解しておく必要があります。

おもなデメリットは、下記のとおりです。

  • 保管できる危険物の種類や数量に制限がある
  • 自治体条例や倉庫区分の影響を受けやすい
  • 保管方法や運用ルールを自由に決めにくい
  • 取扱量の増加により追加対応が必要になる場合がある

将来的な取扱量の変化や事業計画も見据えたうえで、営業倉庫の利用可否を検討しましょう。

営業倉庫を選ぶポイント

危険物を営業倉庫に預ける場合、一般貨物の倉庫選定に比べて確認すべき事項が多くなります。

ここでは、営業倉庫を選ぶポイントを解説します。

保管可能な危険物の種類が明確か

まず確認したいのは、当該倉庫で保管可能な危険物の範囲が明確に定義されているかといった点です。

危険物は種類によって性質や危険性が異なり、同じ指定数量未満であっても、保管条件が変わる場合があります。

事前に確認すべきおもなポイントは、下記のとおりです。

  • 受け入れ可能な危険物の種類
  • 保管できる量や容器の形状
  • 保管時に必要な条件

契約前に条件を整理し、倉庫側の受け入れ基準を確認しておきましょう。

安全設備・保険加入などの管理体制

危険物の保管では、設備の有無だけでなく、日常の管理方法を含めた体制も重要になります。

想定されるリスクに対して、適切な対策が取られているかを確認しましょう。

確認しておきたいポイントは、下記のとおりです。

  • 漏えいや火災を防ぐための安全設備があるか
  • 危険物であることを示す表示や立ち入り管理が行われているか
  • 定期的な点検や、緊急時の対応方法が決められているか
  • 万が一の事故に備えた保険に加入しているか

可能であれば、書類だけで判断せず、実際に倉庫を見学し、運用状況を確認するとよいでしょう。

まとめ:条件を満たせば営業倉庫でも危険物保管は可能

営業倉庫での危険物保管は、消防法で定められた指定数量未満であることを前提に、自治体条例や技術基準を満たす場合に限り、条件付きで認められています。

実際の可否は、危険物の種類や数量、倉庫の区分などによって判断されるため、事前の確認と慎重な検討が欠かせません。

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危険物保管の効率化や安全性の向上を検討されている場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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