省エネ計算のコラム
住宅の省エネ計算(建築物省エネ法)とは?変更点や費用も解説
住宅の省エネ計算は、2015年7月交付の建築物省エネ法にもとづき、住宅のエネルギー効率を評価して改善するための手法です。
従来の計算方法からの変更点としては、今までより厳格な基準が導入され、従来よりも環境に配慮した設計が求められています。ただし、これには一定の費用がかかるため、建築を行う際はコストと性能のバランスが求められます。
本記事では、初心者でも分かりやすい住宅の省エネ計算に関する知識や、従来の計算方法との違いを解説します。
住宅の省エネ計算(建築物省エネ法)とは?
住宅の省エネ計算は、建築物省エネ法にもとづく取り組みのひとつで、住宅のエネルギー使用を最適化するための手法となります。断熱性や冷暖房の効率、再生可能エネルギーの活用などを評価し、建物のエネルギー効率向上を目指します。
建築物省エネ法の改正により、今までよりも厳しい基準が求められ、新築・改築プロジェクトにおいては環境にやさしい設計が重視されています。これにより、エコロジーでありながら、住民にとっても経済的で快適な居住空間となることが期待されます。
では具体的に、どのような基準が設けられたのか詳しく解説します。
2つの省エネ基準
建築物省エネ法では、省エネ基準の柱として2つの要素が設定されています。
省エネ基準には「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」があり、外皮性能は建築物の窓や外壁が内部の熱を保持し、外部からの日差しや熱からの断熱性能を評価します。一方で一次エネルギー消費量は、設備のエネルギー消費効率が一定水準以上であり、建築物の設備機器が基準以上のエネルギー消費効率があるか評価します。
この2つの省エネ基準を満たすことで、建築物は環境にやさしく、より持続可能でエネルギー効率の高いものとなります。
建築物省エネ法により発生する義務
建築物省エネ法では、省エネ基準を満たすことを証明する適合基準と、省エネ計算書の届出義務が発生します。省エネ計算書を提出することで、建築物のエネルギー効率に対する透明性が向上し、環境にやさしく経済的な建物として信頼性が高まります。
また、省エネ基準を満たしていれば、建物の断熱性や設備の効率向上が図られ、エネルギーの無駄を減らせます。さらに、建築者は省エネ計算書を提出することで、省エネ基準を満たしている建物として宣伝できます。
これから紹介する義務は、エネルギーの効率的な利用を奨励し、環境への負荷を軽減する役目を果たします。
適合義務
ひとつ目の適合義務は省エネ基準を満たし、かつ行政や登録省エネ判定機関の省エネ適合性判定を受けなければなりません。たとえば、建築物省エネ法においては、新築・改築を行う際は、エネルギー効率基準への適合が求められるのです。
これは、建築者が省エネ基準にしたがって建物を設計・構築する必要があることを意味します。適合義務の遵守は、エネルギーの効率的な利用や環境への配慮が図られ、環境にやさしい家づくりが可能となります
また、法的な要請をクリアするだけでなく、社会的責任を果たし、未来に向けたエネルギー効率向上の取り組みに貢献します。
届出義務
届出義務は、法令や規制にもとづき、特定の事柄や情報を管轄する行政に知らせる法的な責任のことです。
建築物省エネ法では、建築者や設計者が省エネ基準への適合を確認するために、省エネ計算書を提出する届出義務が課せられています。
これにより、建物のエネルギー効率を適正に評価し、法令遵守を正式な形で確認できます。そのため、透明性も確保し、社会全体が省エネ努力に参加できる仕組みが構築されています。
届出義務の遵守は、環境にやさしい建築物の促進や、エネルギーの効率的な利用に好影響を与えます。
建築物省エネ法による変更点
2013年に施工された建築物省エネ法は、今日にいたるまで改正が繰り返されています。より省エネ対策の強化を促進するため、2024年、2025年に建築物省エネ法の大きな変更が行われます。
これまでの建築基準から、より厳格で効果的なエネルギー効率の規定へ切り替わります。断熱性や冷暖房の性能などが一段と向上し、新築・改築においてはこれらの基準にしたがう必要があるのです。
法改正により、環境にやさしい建築物の普及が進み、地球環境に配慮した設計が強く奨励されていきます。ここでは、今後行われる建築物省エネ法の改正について解説します。
省エネ基準の適合義務化
省エネ基準の適合義務化は、建築分野においてエネルギーの効率的な利用を奨励するための取り組みとなります。2025年4月以降に着工する新築住宅と非住宅は、原則として省エネ基準に適合しなければなりません。
増改築も同様で、増改築する部分にも適合義務が生じます。住宅の省エネ評価には外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準がありますが、外皮性能基準では新築住宅に対して等級4以上の断熱性能を要求されます。
一次エネルギー消費量基準に関しては、設備機器のエネルギーを熱量換算したものを基準一次エネルギー消費量として設定されます。設計一次エネルギー消費量を基準値で割り、BEIが1.0以下であれば省エネ基準を満たしたことになります。
適合性審査の変更
新たな建築物省エネ法施行後は、省エネ基準への適合性審査が建築確認手続きの一環として行われます。建築主は省エネ性能確保計を所轄行政庁か登録省エネ判定機関に提出し、省エネ適判を受けたのちに適合判定通知書を提出します。
適合性審査の変更により、省エネ基準対象件数の増加が見込まれ、それにともない審査の負担も増加します。ただし、負担軽減のため、仕様基準の利用や審査が容易な建築物に対する手続きについては、簡略化される予定となっています。
省エネ性能ラベルの表示
事業者は新築建築物の販売や賃貸物件の広告などを掲載する際、省エネ性能を視覚的に示す省エネ性能ラベルの表示が努力義務とされます。
建築物の省エネ性能が消費者に分かりやすく伝えられるよう、この取り組みが導入されます。ラベル表示の努力義務を通じて、消費者は省エネ性能を考慮しやすくなり、エネルギー効率の高い建築物の選択が促進されることが期待されます。
省エネ性能ラベルの表示は、環境にやさしい製品の選択と、使用者のエネルギーコスト削減意識向上と環境への負荷軽減にも好影響を与えます。
住宅の省エネ計算にかかる費用は?
住宅の省エネ計算にかかる費用は、さまざまな要因によって変動します。建物の規模や複雑さ、計算方法の選択などが影響を与え、一般的には建築事務所やエネルギーコンサルタントに依頼する場合、数万円から数十万円に及ぶことがあります。
計算の範囲が広くなるほど、詳細なデータが必要となり、それが費用に反映される傾向があります。ただし、省エネ対策による将来的なエネルギーコスト削減や、環境への貢献といったメリットにつながります。
具体的な費用に関しては、依頼する会社や業者によって異なるため、複数の業者から見積もりを取って検討しましょう。
こちらの記事では、住宅の省エネ計算に関わる「外皮性能」について解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
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