危険物倉庫の暑さ対策は重要!理由と具体的な対策方法を解説

危険物倉庫の暑さ対策は重要!理由と具体的な対策方法を解説

危険物を保管する倉庫では、夏場の高温環境が人や設備、さらに保管物そのものに深刻な影響を与えます。
過度な熱は作業効率の低下や設備故障、危険物の化学反応を引き起こすリスクにもつながる恐れがあります。

そのため、倉庫内の温度管理や遮熱対策は安全運用の基本です。
本記事では、危険物倉庫で暑さ対策が重要な理由と、現場で実践できる効果的な対策方法を具体的に解説します。

危険物倉庫の暑さ対策が重要である理由

危険物倉庫では、一般的な倉庫以上に温度管理が重要視されます。
高温環境は人の健康だけでなく、設備の故障や作業効率の低下、さらに危険物そのものの安全性にも深く関わります。

ここでは、危険物倉庫で暑さ対策を徹底すべき理由を見ていきましょう。

理由①従業員の健康被害リスクを防ぐため

危険物倉庫では、夏季になると外気温に加え、鉄骨構造や金属屋根の影響で室内温度が50℃を超える場合もあります。
空調の効きにくい閉鎖空間では熱がこもりやすく、作業員が熱中症を発症するリスクが高まります。

倉庫内での熱中症は単なる体調不良にとどまらず、意識障害や重篤な症状を引き起こし、最悪の場合は死亡に至るケースも。
従業員の健康と安全管理は事業継続の基盤であり、企業の重要な責務です。

理由②設備や機器の故障リスクを防止するため

高温環境は危険物倉庫内の設備や機器に悪影響を及ぼす要因となります。
電気系統を備えた換気装置や温度警報装置、計測機器は熱による膨張や回路の劣化によって誤作動を起こす可能性があります。

さらに、電動フォークリフトや制御盤などの電気設備も、高温下では性能低下や短絡事故につながる危険が。
機器トラブルが発生すると保管中の危険物の温度維持が難しくなり、二次的な事故リスクを招く恐れがあります。そのため、設備保護を目的とした暑さ対策が重要です。

理由③作業効率の向上につなげるため

倉庫内の温度が上昇すると、作業員の集中力や判断力が著しく低下し、作業効率の悪化やヒューマンエラーの増加を招きます。
危険物を取り扱う現場では、わずかな不注意が重大事故につながるため、作業環境の快適さは安全性の維持にも直結します。

適切な暑さ対策は作業者の体調を安定させ、業務の精度とスピードの維持に寄与し、結果的に全体の生産性向上につながります。

理由④危険物を安全に保管するため

危険物倉庫の暑さ対策において最も重要なのは、「危険物自体の安全確保」です。
消防法で定義される危険物の中には、温度上昇によって揮発・膨張・発火を起こすものがあります。

第1石油類(ガソリンなど)は常温でも蒸発しやすく、密閉空間での温度上昇により引火性ガスが充満する危険性があります。
また、第4類危険物や可燃性液体は、わずかな温度変化でも化学的特性が変化し、容器の膨張や漏洩を引き起こすため危険です。

危険物倉庫での温度の管理方法

危険物を安全に保管するには、物質の特性に応じた温度管理が欠かせません。
消防法で定められた危険物は、種類によって最適な保管温度が異なります。

代表的な温度管理方法としては、次の3つが挙げられます。

  • 定温保管:倉庫内を一定温度に保ち、危険物の状態変化や劣化を防ぐ方法。常温で反応しやすい物質の保管に適している。
  • 冷却保管:低温を維持して反応や揮発を防ぐ方法。低い温度で化学反応を起こす危険物を安全に保管できる。
  • 加温保管:結晶化や固化を防ぐため、一定以上の温度を保つ方法。電気ヒーターやスチームで温度を維持し、流動性を保つ。

危険物の性質に合わせた温度管理で、保管時のリスクを抑えられます。

危険物倉庫での温度の管理方法

危険物倉庫が高温になりやすいのは、構造や環境に起因する複数の要因が影響しているためです。
代表的な原因について見ていきましょう。

原因①屋根から熱が伝わっている

危険物倉庫の屋根は金属製がほとんどで、直射日光を受けやすい構造です。
夏場は表面温度が80℃近くまで上昇するため、その熱が庫内に伝わることで室温が大幅に上がります。

特に折板屋根は熱伝導率が高いため、日射の影響を直接受けやすい傾向です。
屋根からの熱侵入を抑えるには、遮熱塗料や遮熱シートを用いて反射率を高めましょう。

原因②熱がこもりやすい内部構造になっている

危険物倉庫は火災防止や安全性確保のため、開口部を最小限に設計されています。
そのため外気の循環が起こりにくく、庫内にこもった熱が逃げにくい構造です。

高天井で間仕切りの少ない設計では、上部に熱気が滞留しやすい傾向があります。
内部換気を改善するには、シーリングファンや換気ダクトの導入が効果的です。

原因③搬入口から外気が入ってきている

危険物の搬入・搬出では、搬入口の開閉により高温の外気が流入します。
特に真夏は外気温が高く、冷却された空気が逃げてしまうため倉庫全体の温度が上昇します。

防爆仕様のビニールカーテンやエアーカーテンを設置し、開口部からの熱流入を減らしましょう。

危険物倉庫で実施できる暑さ対策

倉庫の構造や運用条件に応じた暑さ対策により、安全性と作業効率の両立が可能です。
設備面から実施できる代表的な方法を見ていきましょう。

空調設備を使う

危険物倉庫では、防爆仕様の空調設備が推奨されます。
通常のエアコンは火花発生の恐れがあるため使用できません。

防爆エアコンや防爆型換気装置を導入し、温度を一定範囲に保ちながら危険物の劣化や従業員の体調不良を防ぎましょう。

遮熱塗料や遮熱シートを活用する

屋根や外壁に遮熱塗料を塗布すると、太陽光による輻射熱を大幅にカットできます。
金属屋根の倉庫では、施工後に庫内温度が5〜10℃下がるケースもあります。

施工コストも比較的抑えられるため、長期的にみて効率の良い対策です。

屋根用スプリンクラーを設置する

散水によって屋根表面の温度を下げ、内部への熱伝導を抑える方法です。
特に折板屋根の倉庫では高い冷却効果を発揮します。

導入時は水圧や排水経路の確認を含めた安全設計が必要です。

間仕切りシートやカーテンを活用する

冷却エリアと高温エリアを分けて温度管理を行う方法です。
防爆仕様のビニールカーテンを使用することで、作業動線を確保しつつ効率的に温度差を抑制できます。

専門業者に相談する

危険物倉庫は消防法・建築基準法に適合した設備設計が求められます。
独自判断で設備を導入すると法令違反にあたる場合もあるため、設計段階から専門業者へ相談しましょう。

危険物倉庫は、設備の追加や改修が消防法・建築基準法などの厳しい規制を受けます。
空調機器、換気設備、遮熱材、スプリンクラー、間仕切りカーテンなど、
どのような設備でも「防爆仕様であること」と「所轄消防署への事前相談」が欠かせません。

そのため、設計段階から危険物設備に精通した専門業者へ相談し、
消防への協議や設備選定を確認することが重要です。

ユニットハウス式保管庫を倉庫内に設置する方法

既存の工場倉庫の内部に、ユニットハウス式の保管庫を設置する方法も効果的です。

外部に設置する場合と比べて、以下のようなメリットがあります。

・倉庫の屋根・外壁に守られ直射日光の影響を受けにくい
・倉庫全体の空調効果により、ユニット内の温度上昇が抑えられる
・必要な保管エリアのみ温度管理しやすく、省エネにもつながる

また、ユニットハウスは構造が独立しているため、危険物ごとの温度要件に合わせた管理がしやすいという利点があります。

ワールドシェアセリングでは、工場や倉庫内にユニットハウス式の危険物保管庫を設置する施工にも対応しています。
設置を検討している場合は、お気軽にお問い合わせください。

危険物倉庫で働く個人が実施できる暑さ対策

施設全体の対策に加え、従業員一人ひとりのセルフケアも大切です。
具体的な方法を紹介します。

こまめに水分補給を行う

高温環境下では脱水症状が起こりやすくなります。
汗で失われる水分と塩分を同時に補給できる経口補水液の摂取が効果的です。

暑さ対策グッズを活用する

ネッククーラーや空調服、アイスベストなどの冷却アイテムを活用することで、作業中の体温上昇を防げます。
防爆エリア内では電動タイプの使用可否を必ず確認しましょう。

体調管理に気を配る

軽度の頭痛やめまい、倦怠感なども熱中症の初期症状です。
異変を感じた場合は作業を中断し、冷却や休息を取ることが大切です。

危険物倉庫の暑さ対策で安全性と生産性を守る

危険物倉庫では、暑さ対策が従業員の安全と設備の保全、さらに危険物の品質維持に直結します。
屋根・構造・開口部など複数の要因が温度上昇を招くため、適切な管理と防爆対応の設備導入が不可欠です。

安全性を確保しつつ効率的に運用するためには、法令や構造基準に精通した専門業者へ相談することが重要です。
危険物倉庫の設計・施工・温度管理についてお困りの際は、ワールドシェアセリングまでお気軽にご相談ください。

危険物保管庫の設置事例

  • デノラ・ペルメレック株式会社様
    デノラ・ペルメレック
  • TPRエンプラ様
    TPRエンプラ
  • 三森特殊印刷社様
    三森特殊印刷社
  • 海上保安庁(第二管区)様
    海上保安庁

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