危険物倉庫を保有している、今後保有したい方に向けて、危険物倉庫での空調設備について解説します。危険物を保管するためには危険物倉庫が必要です。
しかし設置しようとした際に、空調設備の設置や換気の基準について悩む方は少なくありません。
そこで今回の記事では、危険物倉庫において空調設備を設置する際に知っておきたいことをまとめました。
参考にしていただければ、どのように空調設備を設置するべきか、換気をしながら空調効率を高める方法もおわかりいただけるはずです。
危険物倉庫に空調設備を設置したいと考えられているなら、ぜひ参考にしてください。
そもそも危険物倉庫とは
危険物倉庫とは、危険物を保管しておくための倉庫のことです。危険物には第一類から第六類までの分類があり、それぞれ性状が異なります。いずれにしても、次の3つの条件を満たしており、消防法において危険物と定められているものを保管する場所です。
【危険物倉庫に保管されるものの条件】
- 火災発生の危険性が高いもの
- 火災拡大の危険性が高いもの
- 消火が困難であるもの
- 他の物資と混在することで危険性が高くなるもの
一般的に知られている危険物は、ガソリンや灯油、油性の塗料などです。
それでは危険物について、より詳しく見ていきましょう。
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危険物の分類
危険物は次のように、第一類から第六類までに分けられます。
分類 |
性質 |
概要 |
第一類 |
酸化性固体 |
他の物質を酸化させ、可燃物と混ざったときに、極めて激しい燃焼をする危険性があるもの |
第二類 |
可燃性固体 |
着火しやすい性質を持ち、40℃未満でも引火する恐れがあり、燃焼が速く消火することが困難となるもの |
第三類 |
自然発火性物質及び禁水性物質 |
空気や水に触れることで自然に発火したり、可燃性ガスを発生する恐れがあるもの |
第四類 |
引火性液体 |
引火性の高い液体であり、250℃未満での引火の恐れがあるもの |
第五類 |
自己反応性物質 |
個体、液体で加熱分解などにより、低い温度で大量の熱を発生し、爆発的に反応する恐れのあるもの |
第六類 |
酸化性液体 |
そのもの自体は燃焼しない液体であるものの、混在や近くにある可燃物の燃焼を促す性質を持つもの |
以上のように分類ごとに危険物の性状が異なります。
危険物倉庫にはそれぞれの特性にあわせた設備を用いることが重要です。
なお危険物保管庫・危険物貯蔵庫・危険物倉庫は同じ意味合いで使われるため、特に区別はありません。
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危険物の保有空地とは?
「保有空地」とは、危険物倉庫の周りに確保しなければならない空地のことです。
万一、危険物倉庫から火災が発生した場合、又は隣接建物から火災が発生した場合に、相互の延焼を防ぐために必要なものです。
また、保有空地は消防隊が消火活動をするための空間でもあり、消防法では指定数量の倍数により危険物倉庫の周囲に必要となる距離が定められています。
そのため危険物倉庫の周囲には、定められた保有空地を確保して設置しましょう。
危険物の温度管理の重要性
危険物を保管するには、温度管理が重要となります。
最初に表で示したように、危険物の中には常温でも引火する可能性があり、温度が一定以上になると自然発火するものもあります。
身近なガソリンなど、第4類の危険物でも引火点70℃未満については、換気、排出設備が必要です。
特に第五類のセルロイド類は自然発火の危険性、第二類の可燃性固体は40℃未満のと低温で引火し燃焼が速く消火が困難となります。
近年の夏の暑さを考えると、常温で保管しているだけで火災が起きることも考えられるでしょう。
そのため危険物倉庫では空調設備を整えて、温度管理を徹底することも安全対策の一つとなります。
たとえ温度によって引火する危険物ではなくても、高温下にさらすことにより品質が劣化することも考えられます。
危険物を保管する際には、適切な温度管理を維持できるようにしてください。
危険物倉庫に空調設備を設置する際の注意点
危険物の保管には温度管理が重要であると解説しました。
それでは危険物倉庫に空調設備を設置する際には、どのようなことに注意すべきでしょうか?
注意点1:保有空地を確認する
まずは保有空地を確認してください。
前述したとおり、危険物倉庫には保有空地が設けられていなければなりません。
しかし空調を設置する場合、保有空地の始点が変わることに注意が必要です。
空調には室外機がなければなりません。
必要な保有空地の幅は、倉庫の構造と保管する危険物の危険性によって異なるものです。
しかしいずれにしても、保有空地は通常、倉庫の壁から0.5~2.0mが必要とされます。
また、室外機が設置されると、保有空地の始点は室外機となり、より広い保有空地が必要です。
そのためもしすでに建てられている危険物倉庫に空調設備を設置するなら、保有空地の要件を満たしているか確認しなければなりません。
幅が足りなければ消防法に違反することになるため、事前に保有空地の確認を行いましょう。
関連記事:危険物貯蔵所の保有空地とは?設置する目的と基準を解説
注意点2:換気設備の運用方法を検討する
次に換気設備の運用方法を検討することも重要です。
危険物倉庫では換気設備が必要とされます。
なぜなら消防法では、次のように安全のために、換気設備を設置しなければならないとされているためです。
・危険物に関する政令第9条第10号
危険物を取り扱う建築物には、危険物を取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設けること。
・危険物に関する政令第9条第11号
可燃性の蒸気又は可燃性の微粉が滞留するおそれのある建築物には、その蒸気又は微粉を屋外の高所に排出する設備を設けること
号危険物に関する政令第9条第11号可燃性の蒸気又は可燃性の微粉が滞留するおそれのある建築物には、その蒸気又は微粉を屋外の高所に排出する設備を設けること。
危険物倉庫内では燃える可能性のある蒸気やガスの濃度が高くなる場合も考えられます。
換気をしなければ、万一の場合、火災が発生の危険に繋がることも考えられるでしょう。
そのため換気設備が必要とされていますが、空調設備を設置すると換気により空調効率が低くなります。
そのため換気設備の運用について、あらかじめ検討する必要があります。
センサー式の換気設備を導入したり、可燃性蒸気を検知したときのみ稼働する換気設備の導入が必要となるかもしれません。
危険物倉庫においては、空調設備と換気設備のバランスを考えて導入すべきです。
空調を取り入れる前に、換気設備との兼ね合いが取れているか確認し、運用方法を検討しましょう。
関連記事:消防法とは?基本内容と罰則についてわかりやすく紹介
注意点3:断熱性能を高める
空調効率を高めるには、断熱性能を高める工夫も大切でしょう。
不燃材を使用した断熱性能の高い危険物倉庫であれば、外部から受ける熱量を抑えてより小さなエネルギーでも空調の効率が大きく高まります。
空調のスペックを高くする必要がなくなり、維持管理の導入コストも抑えられるようになるかもしれません。
危険物倉庫では換気の必要性があり、さらに搬出・搬入での温度変化があると考えられます。
そのため開口部や建物自体の断熱性能を高めれば、空調に使用する電力が抑えられるでしょう。
危険物倉庫に空調設備を設置するなら、断熱性能を高めることをおすすめします。
注意点4:保管物品の移動場所を確保しておく
空調設備を設置・交換する際に見落としがちなのが、移動先となる場所の確保です。
保管物品は危険物であるため、温度変化等により火災や爆発が起こらないとも限りません。
また品質が劣化することもあるでしょう。
しかし空調設備を設置したり交換したりする際には、一時的に保管場所が変わります。
一定の量を超えた危険物は、専用の倉庫内に適切に保管しなければならないものです。
危険物の無許可貯蔵は、消防法の重大な違反となります。
仮貯蔵の許可を受けるなど、一時的な保管場所もしっかりと確保しておきましょう。
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危険物倉庫の換気回数は?
危険物倉庫の換気回数は、1時間あたり5回以上が目安とされています。
上記の回数は自然換気設備を除き、強制的に換気する設備において適用されるものです。
換気については原則、自然換気も含まれますが、障害物によって換気が阻害されることがあります。
また当日の風速によっては、基準に満たない日もあるでしょう。
自然換気をする際には、最低0.5m/sの風速が連続していなければならないとされています。
そのため危険物倉庫の換気回数は1時間あたり5回以上を目安とし、強制換気も取り入れるのがおすすめです。
危険物を安全で適切な環境下で保管するため、危険物倉庫では空調設備だけではなく換気の基準も守るようにしてください。
出典:厚生労働省:(PDF)一般原則:全体換気
出典:経済産業省:(PDF)プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン
危険物倉庫の空調設備は基準やガイドラインを確認して
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで危険物倉庫の空調設備設置についてご理解いただけたと思います。
危険物は適切な温度管理と保管をしなければ、発火や爆発に繋がる危険性があります。
しかし換気も必要となるため、空調効率を高めながら保管するにはコツが必要となります。
今回の記事の内容を参考にして、危険物倉庫の空調設備と換気設備のバランスをとりながら、安全性を高めてはいかがでしょうか。
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