「少量危険物の保管庫を新設したいが、周囲にどれくらいの空き地を確保すれば良いのか?」
「保有空地は1mで良いと聞いたけれど、本当にそれで法令基準を満たせるのか不安だ…」
「消防の査察で指摘されたらどうしよう…」
工場や事業所の設備・安全管理を担当されている方なら、このような悩みに直面したことがあるかもしれません。
少量危険物の保管に関する規制、特に「保有空地」の規定は、消防法と市町村の条例が複雑に絡み合い、専門家でなければ正確な理解が難しいのが実情です。
この記事では、そんな担当者の方々のために、少量危険物の定義から、保有空地の具体的な距離の基準、混同されがちな用語との違い、そして自治体ごとの条例を確認する方法まで、専門的な内容を分かりやすく解説します。
最後までお読みいただければ、法令を遵守し、安全を確保しながら、事業所の敷地を有効活用するための具体的な知識が身につくでしょう。
「少量危険物」とは?自社の事業所はどの区分か正確に把握する

保有空地について理解を深める前に、まずその対象となる「少量危険物」が何を指すのかを正確に把握することが重要です。
危険物の規制は、その貯蔵・取り扱い量によって大きく3つの区分に分けられます。
自社の事業所がどの区分に該当するかによって、適用される法律や必要な手続きが全く異なるため、この違いを理解することが安全管理の第一歩です。
消防法における危険物の3つの区分と規制の違い
危険物は、その量に応じて「指定数量以上」「少量危険物」「少量危険物未満」の3つに分類されます。
それぞれの違いを下の表にまとめました。
| 比較項目 | ① 指定数量以上 | ② 少量危険物 | ③ 少量危険物未満 |
| 危険物の量 | 指定数量の1倍以上 | 指定数量の5分の1以上、1倍未満 | 指定数量の5分の1未満 |
| 適用法令 | 消防法 | 各市町村の火災予防条例 | 各市町村の火災予防条例(指定可燃物等として規制される場合あり) |
| 許可/届出 | 危険物施設の許可・検査等が必要 | 各市町村の条例によっては、技術基準・届出等が必要 | 届出要否は自治体条例による |
| 危険物取扱者 | 取扱作業には甲種または乙種の立会いが必要(無資格者のみでの取扱不可) | 原則不要/ただし条例で管理体制を要求されることがある | 原則不要/ただし条例で管理体制を要求されることがある |
① 指定数量以上の危険物
消防法に基づき、製造所・貯蔵所・取扱所の設置や変更には、市町村長等の許可が必要です。また、危険物施設における取扱いについては、危険物取扱者(甲種または乙種)による立会いが必要とされており、無資格者のみで危険物を取り扱うことはできません。このように、法令上の手続き・人的要件ともに、最も厳格な管理体制が求められます。
② 少量危険物
消防法の直接的な規制対象ではありませんが、消防法の委任を受けた各市町村の火災予防条例により、貯蔵・取扱方法や安全基準が定められています。多くの自治体では、設置や貯蔵にあたって所轄消防署への届出が必要とされています。なお、国家資格である危険物取扱者の選任は、原則として義務付けられていませんが、条例に基づき管理責任者の明確化や技術基準の遵守が求められる点には注意が必要です。
③ 少量危険物未満
少量危険物としての届出が不要となるケースが多いのが実情です。ただし、規制が一切存在しないわけではありません。物質や数量によっては、各市町村の火災予防条例により「指定可燃物」や「可燃性液体類」として扱われ、別途、届出や技術基準の対象となる場合があります。灯油や消毒用アルコールなど、日常的に使用される物質であっても、保管方法を誤れば火災の原因となります。そのため、法令上の義務の有無にかかわらず、自主的な安全管理が重要です。
少量危険物保管における「保有空地」の基本

「保有空地(※自治体によっては屋外空地・屋内空地等)」とは、原則として、少量危険物を保管する施設周囲(または設備周囲)に、条例等で定められた幅の空地のことです。
この何もないスペースをわざわざ確保するのには、人命と財産を守るための、重要な2つの目的があります。
保有空地の2つの重要な目的:延焼防止と消防活動スペースの確保
1. 延焼防止の「防波堤」
施設内で火災が発生した際、周囲の建物に燃え移るのを防ぎます。
逆に、隣接する建物で火災が起きても、危険物施設への延焼を食い止める緩衝帯となります。
保有空地は、火災の猛威から周囲を守る「防波堤」の役割を果たすのです。
2. 消防活動の「スペース」
火災現場では、はしご車やポンプ車といった大型車両が活動します。
保有空地は、これらの消防隊が迅速かつ効果的に消火活動を行うための、不可欠な活動スペースとなります。十分なスペースがなければ、消火が遅れ、被害が拡大する恐れがあります。
意外と知らない「保安距離」との違いとは?
保有空地とよく似た言葉に「保安距離」というものがあり、混同されがちです。
しかし、この2つは目的も対象も明確に異なります。
安全管理を行う上で重要な知識のため、違いをしっかり理解しておきましょう。
| 項目 | 保有空地 | 保安距離 |
| 目的 | ① 施設内外の延焼防止② 消防活動スペースの確保 | 危険物施設から外部の保護対象物を守る |
| 対象 | 危険物施設に隣接する敷地や建物 | 学校、病院、住宅、重要文化財など |
| 根拠法令 | 主に市町村の火災予防条例 | 消防法体系(政令・規則等を含む技術基準) |
| イメージ | 施設を守る「内側の堀」 | 周辺地域を守る「外側の堀」 |
言い換えると、保有空地は「内と外の境界」を管理し、保安距離は「外への影響」を管理するための規制です。少量危険物では、条例等で定める技術基準のうち、空地(屋外/屋内空地)の確保が重要論点の一つになります。
少量危険物の保有空地は1mで足りる?条件を徹底解説

「少量危険物は空地(いわゆる保有空地)が1mあればよい」と聞くことが多いです。この理解は一部では当たっていますが、一般化すると危険です。
少量危険物の空地要件は、消防法の委任を受けた各市町村の火災予防条例で定められており、必要な幅は自治体・設置形態により変わります。実際に運用基準では「周囲3m以上の空地」を“防火上安全な距離”として扱う例もあります。
保有空地が1mで足りる可能性があるパターン(例:屋外・一定数量区分など)
条例の具体例として、札幌市の規定では、屋外で少量危険物を貯蔵・取扱いする場合に、容器等の種類と数量区分に応じて空地幅が定められており、条件によっては空地1m以上とされています。
また、同規定では、空地の代わりに防火上有効な塀を設ける考え方や、開口部のない防火構造の壁・不燃材料の壁に面する場合の例外も示されています。
重要なのは、「1m」は“万能の基準”ではなく、容器の種類・数量区分・周囲条件の組合せで成立する場合がある、という位置づけです。
保有空地が1mでは足りないパターン
一方で、次のいずれかに当たる場合、1mでは足りない可能性が高く、条例不適合や火災時リスクの増大につながります。
- 数量区分が上がる場合(例:指定数量の1/2以上〜1未満など)
- 例えば札幌市の条例では、数量区分が上がると空地が2m以上となるケースが確認できます。
- 参考例:第36条の3(少量危険物の屋外貯蔵等の技術基準等)|札幌市
- 容器等の種類が異なる場合(タンク・金属製容器・その他等)
- 周囲に延焼要因(可燃物の堆積等)がある場合
- 空地の趣旨(延焼防止・消火活動の確保)から、空地内に可燃物を置く運用は極めて危険です。
- 自治体がより安全な運用基準を置いている場合
- 例として置賜地域では「周囲3m以上の空地」を安全距離として扱う運用基準もあります。
- 参考例:少量危険物貯蔵取扱い運用基準 | 置賜広域行政事務組合
「保有空地を小さくできる」と言われる仕組み
敷地が限られている場合など、できるだけ保有空地を小さくしたいと考えるのは当然です。
条例には、一定の安全措置を講じることで、必要な保有空地の幅を短縮できる「緩和条件」が設けられている場合があります。
- 開口部のない防火構造の壁に面している
- 自動消火設備や自動火災報知設備が設置されている
- 不燃材料で造られた高さ2m以上の塀やフェンスで囲まれている
これらの緩和条件を適用することで、敷地の有効活用と安全確保の両立が可能です。詳しくは自治体の条例を確認しましょう。
保有空地だけじゃない!少量危険物の保管・取扱いで遵守すべき重要規定

保有空地を適切に確保したからといって、それで安全対策が完了するわけではありません。少量危険物を安全に管理するためには、他にも遵守すべき重要なルールが条例で定められています。
ここでは、特に見落としがちなポイントを解説します。
標識・掲示板の設置から消火設備の準備まで
少量危険物貯蔵・取扱所には、多くの自治体条例で、次のような措置が求められています。
| 項目 | 一般的に求められる内容(条例例) |
| 表示 | 見やすい場所に、少量危険物を貯蔵・取扱っている旨を表示する |
| 掲示 | 危険物の品名、最大数量、火気厳禁等の注意事項を掲示する |
| 消火設備 | 危険物の種類・数量・設置条件に応じ、所要の能力を有する消火器等を設置する |
| 保管環境 | 空地・保管場所内を整理整頓し、延焼や消火活動の支障となる物を置かない |
| 容器管理 | 危険物の性質に適合した、破損・腐食のない容器で適切に管理する |
※具体的な仕様・数量・表示内容は、自治体の条例・運用基準により異なります。
また、条例上の最低基準とは別に、実務上は次のような一般的な安全配慮も重要です。
- 直射日光や高温環境を避ける
- 換気を確保し、蒸気や可燃性ガスが滞留しないようにする
- 周囲に可燃物をみだりに置かない
これらは危険物の性状や保管形態に応じて適切に判断する必要があります。
忘れてはいけない消防署への届出と手続きの流れ
少量危険物の貯蔵または取扱いを開始する際には、事前に所轄の消防長または消防署長へ届け出ることが多くの自治体では求められています。
届出を行わずに設置・使用した場合、是正指導や行政上の措置の対象となる可能性があるため注意が必要です。
一般的な手続きの流れは以下の通りです。
- 事前相談
計画段階で、設置場所や保管庫の仕様について所轄消防署に相談します。 - 届出書類の作成・提出
「少量危険物貯蔵・取扱(廃止)届出書」に、案内図、配置図、構造設備明細書などを添付して提出します。 - 審査・現地確認
消防署が書類を審査し、必要に応じて現地確認を行います。 - 副本の交付・保管開始
問題がなければ、届出書の副本が交付されます。これを受け取った後、危険物の保管を開始できます。
※手続きの詳細や必要書類は自治体により異なります。
法令遵守と効率化の最適解!ユニットハウス型危険物保管庫という選択肢

ここまで解説してきたように、少量危険物の保管には、保有空地の確保をはじめ、表示・消火設備・届出など、多くの法令・条例上の要件を満たす必要があります。
その一方で、現場からは次のような声も多く聞かれます。
- 「法令を守りたいが、設計や協議が複雑」
- 「建設コストや工期をできるだけ抑えたい」
- 「将来の移設・増設にも対応したい」
こうした課題に対する一つの現実的な選択肢として検討されているのが、ユニットハウス型危険物保管庫です。
ユニットハウス型危険物保管庫は、あらかじめ工場で製作された構造体を現地に設置する方式で、次のようなメリットがあります。
- 短工期・コスト抑制
- 現地施工を最小限に抑えられるため、工期・コストを比較的コントロールしやすい
- 移設・増設への対応
- 事業計画の変更や保管量の増減に応じて、柔軟な運用が可能
- 法令対応を前提とした設計検討がしやすい
- 少量危険物に関する条例要件(空地・構造・設備等)を踏まえた計画が立てやすい
- 用途・数量に応じた選択肢
- 保管する危険物の種類や数量に応じて、仕様を検討できる
※最終的な適合可否は、設置場所の条例および所轄消防署の判断によります。
私たち株式会社ワールドシェアセリングは、消防法令に準拠した高品質なユニットハウス型危険物保管庫の販売・レンタルを全国で展開しています。
ワールドシェアセリングが提供するソリューションと導入事例
当社のユニットハウス型危険物保管庫は、お客様が抱える課題を解決するための多くのメリットを備えています。
- 短工期・低コスト:工場で完成品を製造するため、現場での施工期間が短く、コストを抑えられます。
- 移設・増設が容易:事業計画の変更に合わせて、保管庫の移設や増設が柔軟に行えます。
- 法令準拠:少量危険物に関する各種条例の基準を満たした設計で、安心して導入いただけます。
- 豊富なラインナップ:保管する危険物の種類や量に合わせて、最適なモデルをお選びいただけます。
さらに、当社の最大の強みは、東京消防庁OBをはじめとする専門知識豊富なスタッフが在籍している点です。
お客様に代わって所轄消防署との複雑な事前協議や届出書類の作成サポートを行うワンストップサービスを提供し、お客様の負担を大幅に軽減します。
【導入事例:日本フレックス工業株式会社様】
老朽化により法令適合が困難となった既存保管施設の更新にあたり、当社のユニットハウス型危険物保管庫をご採用いただきました。本事例は指定数量以上の危険物を取り扱うケースであり、所轄消防署との協議を経て、必要な許可・安全措置を講じた上で導入されています。その結果、保管環境の安全性向上と業務効率の改善を同時に実現しました。
事例詳細:危険物保管庫の導入事例|日本フレックス工業株式会社様
まとめ:正確な知識で、安全かつ法令に準拠した少量危険物管理を

少量危険物の保管・取扱いには、消防法だけでなく、各市町村が定める火災予防条例への対応が不可欠です。特に「保有空地」は重要な論点ですが、その基準は全国一律ではなく、数量区分・設置条件・周囲状況などを踏まえて自治体ごとに判断されます。
また、空地の確保だけでなく、表示・掲示、消火設備、容器管理、届出手続きなど、複数の規定を総合的に遵守する必要があります。
条例の読み違いや自己判断は、是正指導や手戻りの原因になりかねません。
こうした複雑な要件に対しては、設計段階から法令対応を検討しやすいユニットハウス型危険物保管庫の活用や、所轄消防署との事前協議、専門家のサポートを組み合わせることが、法令遵守と業務効率化を両立する現実的な解決策といえるでしょう。
もし、少量危険物の保管庫設置でお困りのことや、条例の解釈、消防署との協議にご不安があれば、ぜひ一度、私たち株式会社ワールドシェアセリングにご相談ください。
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