有機溶剤と塗料の安全な保管方法は?指定数量ごとの正しい保管方法について

有機溶剤と塗料の安全な保管方法は?指定数量ごとの正しい保管方法について

有機溶剤の保管方法に悩む方に向けて、正しい保管方法と、知っておきたい基礎知識について解説する記事です。

塗料の種類によっては、揮発し引火するなど、危険を引き起こすこともあります。そこで悩みの種となるのが保管方法です。保管場所や環境がわからない、自宅に保管して良いか悩む方も少なくありません。

そこで今回の記事では、塗料の保管方法について基礎から解説します。本記事を参考にすることで、法令に沿った環境で正しく保管できるようになるでしょう。

危険物とは

「危険物」とは、火災・爆発・中毒につながりやすい物品のことを指します。たとえば気温の上昇によって引火する可能性がある、揮発性が高いため蒸気となって体内に取り入れられやすいものなどです。

身近にある危険物としては、ガソリンや灯油など引火性の高いものが挙げられます。しかし有機溶剤も危険物のひとつです。

有機溶剤は呼吸によって蒸気が体内に取り入れられやすいこと、皮膚から吸収されることから危険物とされています[1]。

したがって危険物に分類されるものは、火災・爆発・中毒につながりやすい物品だと考えてください。

参照:厚生労働省:(PDF)有機溶剤を正しく使いましょう

また、一般的に消防法上における危険物は、それ自体が発火又は引火しやすい危険性を有している物質のみではなく、他の物質と混在することによって燃焼を促進させるものも含まれています。

危険物に該当する塗料とは

それでは危険物に該当する塗料について見ていきましょう。塗料の中にも危険物に該当するものとしないものがあります。基本的に危険物の分類における第4類である「引火性液体」が該当し、第4類の中でも次のように細かく分類されています。

【第4類の分類】

  • 第1石油類:ラッカー、シンナー
  • 第2石油類:合成樹脂クリア塗料、溶剤系塗料
  • 第3石油類:合成樹脂エナメル塗料

塗料の中でも、引火点が低い第1石油類と第2石油類、合成樹脂エナメル塗料が危険物として扱われます。特にラッカーやシンナー類は1気圧において、引火点が21℃未満であるため火災のリスクが高いと考えられます。

しかし、最も引火点が高い合成樹脂エナメル塗料でも70℃以上で引火するため、塗料の保管方法には十分な注意が必要です。

有機溶剤の含有率と残存量について

保管の際の有機溶剤含有率は、一律に満量により算出されます。例えば18Lの容器に半分しか入っていなくても、保管上は18Lとして計算してください。

同じようにたとえば、有機溶剤の含有率が10%であったとしても、18Lの容器に入っているなら18Lとして計算します。含有率が10%でも、1.8Lとはなりません。

正しい塗料の保管方法を理解するには、有機溶剤の含有率と残存量を加味しないことが重要です。

有機溶剤の取り扱い上の注意

有機溶剤を取り扱う際には、次のようなことに注意する必要があります。

【注意点】

  • 主剤と硬化剤を混合した後はすぐに使い切ること
  • 気温が0℃に近づかないように適切な温度で管理すること
  • 皮膚に付着しないようにすること
  • 指定数量に基づき適正な容器で保管を行うこと
  • 危険物取扱者を配置すること

有機溶剤の保管には注意すべきポイントが4つあります。まず、主剤と硬化剤を混合した後はすぐに使い切り、そのまま保管しないことが重要です。混合後に保管をすると、ゲル化してしまって浸透しにくくなります。特に気温の高い時期は要注意です。

反対に気温が低い季節には、低温になりすぎないように注意してください。約0℃の環境で保管すると、樹脂が凝集してしまい使用できません。

また、危険物であるため、皮膚に付着しないよう取り扱い、指定数量に基づいて保管することも重要です。指定数量については、次の項目で解説します。

危険物の指定数量

「危険物の指定数量」とは、危険物のリスクを考慮したうえで保管できると定められた量のことです。消防法によって定められています。

つまり、危険性をランク付けして、危険性の高い危険物には指定数量を少なくして、危険性の低い危険物は指定数量を多くするという方法をとっています。危険性が高い危険物ほど、保管できる量は少なくなります。

また、指定数量未満の危険物の貯蔵、取扱いについては、各市町村の条例で貯蔵・取扱いの基準が定められています。

塗料の保管方法を正しく把握するために、第4類引火性液体の中でも、有機溶剤に該当する種類の指定数量を確認してみましょう。

【有機溶剤の種類ごとの指定数量】

  • 第1石油類(非水溶性液体):200L(40L)
  • 第2石油類(非水溶性液体):1,000L(200L)
  • 第3石油類(非水溶性液体):2,000L(400L)

出典:総務省消防庁:(PDF)危険物関連の消防法令抜粋

引火点が低いラッカーやシンナー類に該当する第1石油類は指定数量が少なく、200Lまでの保管に制限されています。第2石油類・第3石油類でもそれぞれ指定数量が定められているため、超過しない保管方法を考える必要があります。

上記の括弧内の数量は、少量危険物を保管する場合の指定数量を指します。通常の保管場所の1/5未満までしか保管できません。

リスクを回避するため、危険物を保管する際にはそれぞれの指定数量を把握しておくことが重要です。

参照:総務省消防庁:(PDF)

指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクに係る火災予防条例(例)の運用について

指定数量による危険物の保管量の規制

危険物には指定数量と呼ばれる、保管できる量の上限があると解説しました。指定数量は危険物保管の規制に関わっており、規制基準によってかかる規制や保管の条件も変わります。

基準となるのは、「指定数以上」「指定数量の1/5以上~指定数量未満」「指定数量の1/5未満」の3パターンです。

それぞれにどのような規制がかかるのかを解説します。有機溶剤の保管方法を考える際には、次の規制を知ったうえで正しく保管しましょう。

指定数以上

まず、指定数以上の危険物を保管する場合、可能であれば指定数量未満になるよう有機溶剤の量を調整します。もし減らせない場合は、「危険物倉庫」に保管する必要があり、消防法による規制の対象となります。そのため、保管に際しては市長村長の許可が必要となり、消防署への許可申請が必要です。

消防署に許可申請を行うと、消火設備の設置や管理者が配置されているか、また種類や数量の届出が正確であるかが審査確認の対象となります。保管や取り扱いについても条件が発生し、次のような条件を満たしていなければ許可が下りません。

【条件】

  • 危険物乙種第4類もしくは危険物甲種の資格取得者を配置すること
  • 消防署長に申請を行って許可を得ること
  • 消防署長から許可を得た危険物倉庫で貯蔵すること</li >

指定数量以上の危険物を保管する必要がある場合は、危険物倉庫に収めることが前提となります。また、消防署長に届出を提出しなければならず、許可が得られた場合のみ有機溶剤の保管が可能です。

また最初の届出だけでなく、保管内容や管理者を変更するときにも届出や申請が必要です。

保管する量によっては、予防規定の認可も消防法に定められているため、必要な認可・許可・申請を必ず行うようにしましょう。

参照:総務省消防庁:1.危険物規制

指定数量の1/5以上~指定数量未満

指定数量未満であり、かつ1/5以上の数量の有機溶剤の保管方法は、自治体ごとに規制されています。指定数量未満かつ1/5以上の数量を保管する場合は、「少量危険物」とされ、消防法により定められた各市町村条例により規制されます。

しかし保管方法が少量危険物に該当する場合、一般的な危険物よりも厳格に規制される傾向があります。ただし、規制は自治体ごとに異なるため、地域の規制内容を確認する必要があります。

少量危険物に該当すれば、 消防署への届出が必要です。エリア内の消防署に問い合わせて、必要な手続きも行ってください。

指定数量の1/5未満

指定数量の1/5未満の危険物であれば、通常の倉庫での保管も可能です。条件に該当する危険物の保管であれば、「少量危険物未満」となり、ごくわずかな量のみの保管となります。

そのため、危険物倉庫などの特殊な施設を利用する必要はありません。冷暗所であれば、一般的な保管方法で良いとされます。

消防署への届出や消防法による規制もありません。ただし、自治体によっては規制が設けられている場合もあります。必ず地域の有機溶剤保管方法を確認してから保管しましょう。

塗料と有機溶剤の正しい保管方法

最後、有機溶剤と塗料の正しい保管方法をご紹介します。

【正しい保管方法】

  • 法令の基準を満たすこと
  • 標識を掲示すること
  • 適正な容器に保管をして隙間なく蓋を閉めること
  • 湿気の少ない冷暗所に保管すること
  • 保管期間は1年までを目安にすること

塗料や有機溶剤の保管方法として、注意すべき5つのポイントは上記の通りです。

基本は法令の基準を満たすことと、消防法令で定められている標識・掲示板・注意事項を表記した掲示板により注意喚起を正しく行うことです。

塗料を良い状態で保管するためには、隙間なく蓋を閉め、冷暗所に保管することが重要です。そして1年以内に使い切ってください。

有機溶剤の保管方法は保管量と種類に応じて判断を

いかがでしたでしょうか?この記事をお読みいただくことで、有機溶剤の保管方法をご理解いただけたのではないでしょうか。

塗料の保管方法は有機溶剤の種類によって変わります。また、保管する数量や地域によっても異なるため、条件ごとに適切な保管方法を検討する必要があります。

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