危険物の屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所は、危険物を取り扱う際に必要な施設であり、火災や爆発の発生を防ぐために厳しい規定に沿って設計されます。
本記事では、両施設の違いと、危険物の安全保管に関する基準を詳しく説明します。
作業場の安全維持に役立つ情報も共有しますので、危険物を管理する際はぜひ参考にしてください。
屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所の違いについて
危険物を適切に取り扱うためには、屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所の違いを理解することが重要です。
以下の表に、それぞれの特徴と主な違いを整理しました。
特徴 |
屋内貯蔵所 |
屋内タンク貯蔵所 |
保管物質の状態 |
固体や液体 |
主に液体や気体 |
装置の設計方針 |
一般的な安全装置(換気、漏洩防止) |
特化した安全装置(耐圧性能、耐腐食性能) |
重要な要件 |
適切な換気システム、漏洩防止設備が備えられていること |
耐圧性能、耐腐食性能、緊急排出システムが備えられていること |
屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所は保管する物質の状態が異なり、設計にもその影響が現れています。
屋内貯蔵所は固体や液体を保管するための一般的な施設であり、適切な換気システムや漏洩を防止する設備などが備えられていることが必須条件です。
一方、屋内タンク貯蔵所は、主に液体や気体の危険物を大量に保管するために設計されています。
そのため、耐圧性能や耐腐食性能がより重視されるうえに、緊急排出システムなどの特化した設備を備えていることが求められます。
屋内貯蔵所とは
屋内貯蔵所は、危険物を保管する専用施設です。
平屋建てで、高さが6メートル未満、床面積が1,000平方メートルを超えないよう設計されています。
火災発生時の延焼を防ぐために、壁や柱、床は耐火性を備えており、屋根や梁にも不燃性の材料が使用されているのが特徴です。
出入口以外には開口部が作られず、その出入口にも特定防火設備が設置されます。くわえて、出入口や窓にガラスを用いる場合は、網入りガラスを使用しなくてはなりません。
また、漏れ出した危険物が地中へ浸透しないように、床は特殊な素材あるいは構造であることが求められます。
保管される危険物についても規定があり、通常、容器に収められた状態で屋内に置かれる決まりとなっています。
危険物の種別によっては追加の基準が適用される場合があるため、それぞれのケースに応じた保管方法を取ることが重要です。
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屋内貯蔵所の基準について
屋内貯蔵所の規定は、「危険物の規制に関する政令」の第10条にて定められています。
主な内容として挙げられるのは、先に述べたような、壁や柱を耐火構造とすることや、窓や出入口に防火機能を設けることなどです。
以下では、いくつかの重要な基準をご紹介します。
基準①:構造的な基準
屋内貯蔵所向けの基準は、危険物の安全な保管を実現するため、厳格に定められています。
たとえば、設施は一階建てで、軒の高さが6メートル未満、床面積が1000平方メートル以下でなくてはなりません。
つまり、2階建て以上の建物は屋内貯蔵所として使えないのです。
屋根には不燃性の軽金属を使用する必要があるほか、爆発時の爆風を外に逃がす目的で、天井の設置も禁じられています。梁や柱、床には、耐久性・耐火性の高い素材を使用する必要があります。
また、床は危険物が染み込まないような構造にしたうえで、漏れた危険物を集められるように、傾斜と溜まり場を設置するという対応も必要です。窓にも、破損に強い網入りガラスの使用が求められます。
これらすべての基準は、危険物を安全に保管し、事故発生時の損害を最小限に留めるために設けられています。
基準②: 設備的な基準
屋内貯蔵所には、危険物を安全に保管するうえで欠かせない、さまざまな設備が必要です。
特に、保管する危険物の量が、指定された基準量の10倍を超える施設の場合、避雷設備の設置は絶対条件です。
引火点70℃未満の危険物を扱う際には、その蒸気を安全に外部へ排出するためのシステムを導入する必要があります。
また、作業空間の明るさを保ち、危険物を取り扱う作業者の安全を確保するための、採光設備と照明の設置も欠かせません。
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屋内タンク貯蔵所の基準について
屋内タンク貯蔵所については「危険物の規制に関する政令」の第12条にて、安全に危険物を保管するための基準が設定されています。
いずれの基準も、屋内タンク貯蔵所を安全に運営するために必要な内容ばかりです。
以下で、その要点について詳しく説明します。
基準①:構造的な基準
屋内タンク貯蔵所は一階建ての建築物であり、危険物の格納用に特別に設計されたタンクが、貯蔵所内の専用室に設置されています。
安全性および識別性を高めるための、さまざまな基準が設定されているのが特徴です。
貯蔵用のタンクには厚さ3.2mm以上の鋼板を使用し、錆防止のための塗装を施さなくてはなりません。
また、ほかのタンクや壁との間隔は0.5メートル以上確保する必要があるうえに、最大容量を指定数量の40倍以内とする条件も存在します。
タンクのみならず、貯蔵所の構造についても注意しましょう。タンク専用室を建築・配置する際は、屋内貯蔵所の規定に基づいた、耐火構造の壁や柱、床、梁、天井、そして窓ガラスが必要です。
くわえて床に関しては、危険物が浸透しないような設計と、適切な傾斜の設置も求められます。出入口の敷居を、床面から0.2m以上の高さに作成する必要がある点も、留意しておいてください。
また、屋内タンク貯蔵所であることを示す標識を、見やすい場所に掲示することも義務付けられています。
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基準②:設備的な基準
屋内タンク貯蔵所の安全性を高めるため、窓や出入口には防火機能を備えた設備が必須です。特に延焼のリスクがある外壁に出入口を設置する場合は、自動で閉じる防火設備を設ける必要があります。
さらに、危険物の安全な貯蔵と取り扱いを実現するための適切な採光、照明、そして換気設備の設置も求められます。
これらの設備は、日々の作業の安全を保障するためだけではなく、問題が発生した際に速やかに対応するために必要なのです。
屋内タンク貯蔵所では、保管する危険物の種類や量に応じて、さらに細かな規定や特例が設けられています。そのため、危険物の種類に応じて柔軟に安全対策を講じることが可能です。
それらの基準を正確に理解し、遵守することが、火災や事故のリスクを最小限に抑えることにつながります。
安全な作業環境の維持は、危険物を取り扱ううえでもっとも重要な要素の一つですから、必ず実現しましょう。
屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所の基準
屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所は、ともに「危険物の規制に関する政令」に基づく厳しい基準に従って設計されています。
いずれも、危険物を安全に保管するための構造や設備を有する必要があるのです。具体的には、適切な防火設備、換気システムなどが含まれます。
安全な作業環境を確保し、事故のリスクを最小限に抑えるには、こうした基準を正しく理解し、適用しなくてはなりません。
危険物の保管に関して不明点があれば、危険物管理のプロであるワールドシェアセリングにぜひご相談ください。
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