危険物を貯蔵する棚の選び方とは?必要な届出も解説

危険物を貯蔵する棚の選び方とは?必要な届出も解説

危険物を取り扱う際は、その保管方法にも細心の注意を払う必要があります。

とくに危険物を貯蔵するための棚の選び方や、必要な届け出に関する知識は、安全な作業環境を維持するうえでは欠かせません。

本記事では、危険物の種類と分類をお伝えしたうえで、保管棚の選び方や棚に関わる確認事項を解説します。

危険物を貯蔵する棚とは?

危険物を貯蔵する棚は、さまざまな危険物がもたらすリスクを最小限に抑えるため、特別に設計されたものであることが重要です。

これらの棚は貯蔵される危険物の特性に適合するように、耐火性や耐薬品性、強度といった基準を満たす必要があります。なお、消防法に基づいて第1類から第6類まで細かく分類された危険物に対して、それぞれ安全な保管方法が定められています

貯蔵する棚を選定する際は、危険物の種類のみならず、保管する危険物の量や倉庫の設計にも注意しなければなりません。

【関連記事】
危険物施設とは?種類の違いについて解説!
危険物倉庫とは?建築基準の基準をご紹介!

危険物の種類と分類

消防法により定められた危険物の種類と分類、それらの特性と保管する際の注意点を、表にまとめました。

【危険物の種類ごとの分類と特性、保管時の注意点】

類別 性質 特性 保管時の注意点 
第1類 酸化性固体 ほかの物質を強く酸化させ、熱や衝撃で激しい燃焼を起こす 適切な換気と分離保管 
第2類 可燃性固体 比較的低温で引火しやすく、燃焼が速く消火が困難である 防火設備と速やかな消火手段を確保 
第3類 自然発火性物質及び禁水性物質 空気にさらされると自然に発火、または水と接触で発火する 密閉容器での保管と表示・警告標識の掲示 
第4類 引火性液体 引火性を有する 換気設備と漏洩対策 
第5類 自己反応性物質 加熱分解により低温で多量の熱を発生し、爆発的に反応が進行する 温度管理と避難計画 
第6類 酸化性液体 燃焼しないが、ほかの可燃物の燃焼を促進させる 分離保管と適切な換気 

上記の表を参考にして、危険物の種類に応じた適切な保管方法を選定し、安全管理を徹底してください。

関連記事:危険物の種類一覧!第1類から第6類までの内容を紹介

指定数量と取り扱いについて

危険物には、それぞれ取り扱いや規制の基準となる「指定数量」が定められています。

取り扱う量によって管理方法が定められており、以下では、一般家庭でもよく扱われる「ガソリン」を例に挙げ、表でまとめました。

【ガソリンの指定数量と管理要件】

保管量の範囲 分類 管理要件 注意点 
200L以上 指定数量以上 市町村の許可が必要 製造所、貯蔵所、取扱所として区分される 複数の危険物を合わせた総量も考慮する必要がある 
40以上〜200L未満 少量危険物 市町村の定める防災条例に従った管理が必要になる 地域によって細かな規制が異なる場合がある 
40L未満 規制対象外 特に規制はないが、適切な保管が推奨される 安全性を考慮し、専用の携行缶等を使用することが望ましい 

ガソリンを含む危険物の取り扱いでは、保管量に応じて異なる管理が求められます。

指定数量を超える量を保管するには、市町村からの許可が必須であり、少量危険物として扱われる量では、防災条例に従った管理が必要とされます。

関連記事:危険物指定数量とは?覚え方や届け出について解説

危険物保管棚の設置が必要な場合

では、実際に保管棚が必要になるのは、どういった場面でしょうか。

業務内容にもよりますが、企業によっては灯油・シンナー・アルコールなど数百リットル~数千リットルと、その保管量が非常に多い場合もあります。

しかし、保管できるスペースは限られているので一斗缶などを仕方なく積み上げて保管している企業があるとも言われています。

こういった保管体制では地震に限らずとも、日常の業務中にも崩れ落ちたり、中身が漏れ出たりと、大変危険です。

自治体によっては積み上げての保管を禁止しているところもあります。
そのため、保管量の把握と管理、そして安全な運用のために保管棚が必要となってくるのです。

関連記事:危険物になるアルコール製剤とは?取り扱い方と保管方法を解説

危険物保管棚の選び方

危険物の取り扱いには、事前の準備が必須です。

特に、保管設備やその強度については、各自治体の消防署や消防局に計画書を提出し、相談を行わなければなりません。

この手順を通じて安全に危険物を管理し、保管するための基準や要件を確認します。

危険物の保管に関わる具体的な計画や、設備が適正かどうかを検証することで、事故の予防や安全な作業環境の確保につながるわけです。

関連記事:危険物保管庫の選び方

危険物の棚にまつわる確認事項と届出

棚の設置に際して、危険物を安全に保管するためにいくつかの重要な確認事項があります。

棚の強度や耐火性、耐薬品性をはじめ、設置場所に応じた地域別補正係数や地盤別補正係数を確認しなければなりません。

以下では、危険物の棚に関して確認しておくべきことや、必要な届け出について詳しく説明します。

棚の強度

危険物を保管する際、棚の耐震性は重要な要素です。

保管棚は、設定された耐震強度基準を満たしていなければ使用できません。
この基準を満たすため、設置される場所の地域別補正係数や地盤別補正係数の確認が必須となります。

これらの係数は自治体ごとに定められており、地震発生時のリスクを最小限に抑えるためのものです。

構造計算書

構造計算書は、棚の安全性を証明するために必要な書類です。

この書類には、棚の立面図・寸法・段の配置など、棚の構造と耐力を数値化したものが記載されています。収納予定の荷物の大きさや、重量に合わせた棚の設計が必要です。

構造計算書の提出は、設置許可を申請する際に欠かせないものであり、棚が規定の安全基準を満たしていることを証明するために使われます。

平面図

危険物の保管における棚配置は、事前に提出する平面図に基づく正確なレイアウトが求められます。

この平面図は、実際の棚の配置と一致している必要があり、もし提出された平面図と実際の配置が異なる場合、消防署の立ち入り検査で指摘される可能性があります。

届出について

指定数量以上の危険物を保管する際は、消防法に基づいた厳しい規則が適用されます。条例で定める基準に沿った施設でのみ危険物を貯蔵し、取り扱うことが許可されているわけです。

消防庁に届け出る際は、施設の設備や人員の整備を適切に行ったうえで、取り扱う危険物の数量を明記しなければなりません。

法律では、基準を満たさない場所での危険物の貯蔵や製造、保管を禁止しています。
倉庫の容量不足や棚の移動、改造が必要になった場合でも、消防庁から許可を得る必要があります。

【関連記事】
危険物保管庫を導入するなら知っておくべき立入検査や届け出の知識
消防法とは?基本内容と罰則についてわかりやすく紹介

危険物保管棚を設置する手順

危険物を保管するための棚の特徴・必要性はおわかりいただけましたでしょうか。

では、実際に設置するまでの流れを見てみましょう。
以下は、危険物保管棚を設置するまでの基本的な流れを示した表です。

【危険物保管棚を設置する手順】

基本的な流れ 説明 
1.危険物の種類と量の確定 危険物の種類と保管する量を特定し、必要な保管方法や設備を決定する 
2.規制と要件の確認 消防法など、保管に関わる規制を理解し、必要な条件を満たす 
3.保管場所の選定 地震や火災のリスクを考慮して、適した保管場所を選定する 
4.保管棚の選定と設計 安全基準を満たす保管棚を選び、必要に応じてカスタムする 
5.構造計算書と平面図の作成 設置許可申請用に、棚の構造計算書と平面図を作成する 
6.設置許可申請 必要な書類を添えて、地元消防署や消防局に許可を申請する 
7.設置と検査 専門業者により保管棚を設置し、検査を受ける 
8.継続的な管理と点検 定期的に保管棚を点検し、維持管理を行う 

この流れに沿って行動すれば、危険物を安全に保管するための準備が整いますので、ぜひ参考にしてください。

危険物保管棚を設置する際は事前計画と手続きが必要

危険物保管棚の設置は、法令に基づき、正確な計画と手続きが必要です。

適切な保管方法や施設の設計から許可申請まで、各ステップを丁寧に進めることが安全確保につながります。危険物の種類と量を確定し、規制と要件を理解したうえで、安全基準を満たす保管場所と棚を選ぶことが重要です。

構造計算書と平面図の作成を含め、設置許可の取得から定期的な管理と点検に至るまでの流れを確実に守りましょう。

危険物保管棚を設置することで、保管庫のスペースを最大限活用できる、頑丈さや耐震力により安全に保管できるなどのメリットがあります。

床に置いておくよりも危険物の取扱いも容易になるため、事故の防止や安全な作業環境の確保にもつながります。

危険物保管棚の設置について、ご不明なことがございましたら、ワールドシェアセリングにご相談ください。国家資格者が、所轄消防との事前協議から設置まで、トータルでサポートいたします。

危険物保管庫少量危険物保管庫・貯蔵ならワールドシェアセリングへ

コラムカテゴリの最新記事