危険物第5類の保管方法や消火方法を解説

危険物第5類の保管方法や消火方法を解説

危険物第5類は、可燃性や爆発性を有する危険な物質です。

指定数量を超えて保管する際は、消防法に則った適切な方法をとる必要があります。

そこで本記事では、危険物の定義や分類を紹介したうえで、第5類の保管方法や消火方法を詳しく解説します。

危険物第5類を取り扱う業務に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。

危険物の定義

一般的に“危険物”と聞くと、爆発や引火引き起こす物質を想像しますが、消防法では以下のように定義されています。

  1. 火災発生の危険性が大きいもの
  2. 火災拡大の危険性が大きいもの
  3. 消火の困難性が高いもの

引用元:総務省消防庁

消防法における危険物の範囲は広く、身近な物ではガソリンや灯油も該当します。

いずれも取り扱いに注意が必要な物なので、適切な保管方法を選び、リスクを軽減することが重要です。

関連記事:危険物の種類一覧!第1類から第6類までの内容を紹介

消防法上の規制

消防法では、危険物の取り扱いについて多くの規制を定めています。

危険物の貯蔵や運搬を行う際は、これらの規制を遵守しましょう。

①指定数量以上の貯蔵・取り扱いの規制

消防法第10条では、“指定数量以上の危険物は、製造所や貯蔵所、取扱所以外の場所で貯蔵・取り扱いを行ってはならない”と定められています。

第十条 指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。

引用元:消防法 | e-Gov法令検索

指定数量は危険物の種類ごとに設定されており、爆発性や引火性が高いものほど制限が厳しくなっています。

たとえば第5類に分類される危険物の指定数量は、第一種自己反応性物質が10kg、第二種自己反応性物質が100kgです。

なお、危険物の貯蔵・取り扱いを行う製造所や貯蔵所には、位置や構造、設備などの基準が細かく規定されています。

関連記事:危険物指定数量とは?覚え方や届け出について解説

②指定数量未満の貯蔵・取り扱いの規制

取り扱う危険物が指定数量に満たない場合は、消防法による厳格な規制はありません

ただし、自治体が火災予防条例で定めることによって、指定数量未満の危険物に対して、取り扱いの基準が設けられています。

危険物を保管する際は、指定数量に満たない場合でも自治体の条例を忘れずに確認しなければなりません。

③運搬の規制

危険物を運搬する際は、安全確保のための基準に従う必要があります。

貯蔵・取り扱いの規制とは異なり、数量の多寡による違いはありません。

消防法では、危険物の輸送を“運搬”と“移送”の2種類に分けており、トラックやワゴン車などで運ぶ場合は運搬、タンクローリーで運ぶ場合は移送と定義しています。

危険物を入れる容器の構造や表示する項目が決まっているほか、積載方法や種類の異なる危険物を混載する際のルールも定められています

関連記事:消防法とは?基本内容と罰則についてわかりやすく紹介

危険物の分類

ここからは、消防法で分類される危険物の種類について、それぞれの特徴を解説します。

第1類

類別  第1類 
性質  酸化性固体 
代表的な物質  ・塩素酸ナトリウム ・硝酸カリウム ・硝酸アンモニウム 

 第1類の酸化性固体は、物質そのものは燃焼しないものの、ほかの物質を強く酸化させる性質をもっています。

可燃物と混合したときに、熱や衝撃、摩擦によって分解し、極めて激しい燃焼を起こさせる特性があります。

第2類

類別  第2類 
性質  可燃性固体 
代表的な物質  ・赤リン ・硫黄 ・鉄粉 

・固形アルコール 

・ラッカーパテ 

可燃性固体は、その名の通り、火炎によって着火しやすい固体、または40℃未満の比較的低温でも引火しやすい固体です。

着火しやすいうえに燃焼のスピードが速く、一度火がつくと消化することが難しいという特徴があります。

第3類

類別  第3類 
性質  自然発火性物質および禁水性物質 
代表的な物質  ・ナトリウム ・アルキルアルミニウム ・黄リン 

自然発火性物質と禁水性物質は、第3類に該当します。

空気にさらされることで自然に発火する物質を自然発火性物質、水と接触することで発火、もしくは可燃性ガスの発生を引き起こす物質を禁水性物質といいます。

禁水性物質は、火災が生じた際に水をかけて消化しようとすると、かえって燃焼が激しくなるおそれがあるため、注意しなければなりません。

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第4類

類別  第4類 
性質  引火性液体 
代表的な物質  ・ガソリン ・灯油 ・軽油 

・重油 

・アセトン 

・メタノール 

第4類に含まれるのは、ガソリンや灯油などの引火性液体です。

該当する液体は、引火点や発火点によって細かく規定されています。

第4類 引火性液体

品名  特性  代表的な物質 
特殊引火物  ・発火点が100℃以下 ・引火点が-20℃以下で沸点が40℃以下  ・ジエチルエーテル ・二硫化炭素 
第1石油類  ・引火点が21℃未満  ・アセトン ・ガソリン 
アルコール類  ・1分子中の炭素の原子数が1~3個までの飽和一価アルコール  ・メチルアルコール ・エチルアルコール 
第2石油類  ・引火点が21℃以上70℃未満  ・灯油 ・軽油 
第3石油類  ・引火点が引火点70℃以上200℃未満  ・重油 ・クレオソート油 
第4石油類  ・引火点が200℃以上250℃未満  ・ギヤー油 ・シリンダー油 
動植物油類  ・動物の脂肉等または植物の種子や果肉から抽出した物質 ・引火点が250℃未満  ・オリーブ油 ・ゴマ油 

 

危険物第4類は非常に引火しやすく、往々にして火災の原因となります。

そのため、危険物取扱者試験においては、もっとも重視されるカテゴリーの一つです。

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参照元:消防法 | e-Gov法令検索

第5類

類別  第5類 
性質  自己反応性物質 
代表的な物質  ・ニトログリセリン ・トリニトロトルエン ・ヒドロキシルアミン 

 自己反応性物質は、自己燃焼しやすい固体や液体の総称です。

比較的低い温度で、多量の熱が発生するという特徴をもちます。

第5類 自己反応性物質

品名  物質  性質  指定数量 
有機過酸化物  ・過酸化ベンゾイル ・メチルエチルケトンパーオキサイド  第一種自己反応性物質  10kg 
硝酸エステル類  ・硝酸メチル ・硝酸エチル ・ニトログリセリン 

・ニトロセルロース 

ニトロ化合物  ・ピクリン酸 ・トリニトロトルエン 
ニトロソ化合物  ・ジニトロソペンタメチレンテトラミン  第二種自己反応性物質  100kg 
アゾ化合物  ・アゾビスイソブチロニトリル 
ジアゾ化合物  ・ジアゾジニトロフェノール 
ヒドラジンの誘導体  ・硫酸ヒドラジン 
ヒドロキシルアミン  ・ヒドロキシルアミン 
ヒドロキシルアミン塩類  ・硫酸ヒドロキシルアミン 
その他の政令で定めるもの  ・アジ化ナトリウム ・硝酸グアニジン 1-アリルオキシ-2,3-エポキシプロパン 

4-メチレン-2-オキセタノン 

 長時間空気にさらされると分解が進み、自然発火するものがあるため、取り扱う際は室温や湿気、通風などに配慮が必要です。

第6類

類別  第6類 
性質  酸化性液体 
代表的な物質  ・過塩素酸 ・過酸化水素 ・硝酸 

 第6類の酸化性液体は、第4類のように物質そのものが燃焼することはありませんが、混

在するほかの可燃物の燃焼を促進する性質を有しています。

反応する相手を酸化させるため、保管には耐酸性の容器を使用し、取り扱い時には保護具をつけなければなりません。

危険物第5類の保管方法・消火方法

第5類に該当する物質は、数ある危険物のなかでも特に慎重な取り扱いが求められます。

ここからは、具体的な保管と消火の方法を詳しく解説します。

保管方法

指定数量以上の危険物は、適切な貯蔵所で保管しなければなりません。

消防法にくわえて建築基準法や都市計画法の基準を満たした貯蔵所のことを、“危険物保管庫”といいます。

危険物を保管する際は、“危険物以外の物品や類の異なる危険物を、同じ場所に貯蔵してはならない”という決まりがあります。

なぜなら類の異なる危険物同士は、それぞれの特性が違うため、同時貯蔵した際に火災発生のリスクが高まるからです。

第二十六条 法第十条第三項の危険物の貯蔵の技術上の基準は、前二条に定めるもののほか、次のとおりとする。

一 貯蔵所においては、危険物以外の物品を貯蔵しないこと。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

一の二 法別表第一に掲げる類を異にする危険物は、同一の貯蔵所(耐火構造の隔壁で完全に区分された室が二以上ある貯蔵所においては、同一の室。次号において同じ。)において貯蔵しないこと。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

引用元:危険物の規制に関する政令 | e-Gov法令検索

ただし、類の異なる危険物同士でも、例外的に同時貯蔵が認められている組み合わせがあります。

(類を異にする危険物の同時貯蔵禁止の例外)

第三十九条 令第二十六条第一項第一号の二ただし書の総務省令で定める場合は、次のとおりとする。

一 屋内貯蔵所又は屋外貯蔵所において次に掲げる危険物を貯蔵する場合で、危険物の類ごとに取りまとめて貯蔵し、かつ、相互に一メートル以上の間隔を置く場合

イ 第一類の危険物(アルカリ金属の過酸化物又はこれを含有するものを除く。)と第五類の危険物

ロ 第一類の危険物と第六類の危険物

ハ 第二類の危険物と自然発火性物品(黄りん又はこれを含有するものに限る。)

ニ 第二類の危険物のうち引火性固体と第四類の危険物

ホ アルキルアルミニウム等と第四類の危険物のうちアルキルアルミニウム又はアルキルリチウムのいずれかを含有するもの

ヘ 第四類の危険物のうち有機過酸化物又はこれを含有するものと第五類の危険物のうち有機過酸化物又はこれを含有するもの

ト 第四類の危険物と第五類の危険物のうち一―アリルオキシ―二・三―エポキシプロパン若しくは四―メチリデンオキセタン―二―オン又はこれらのいずれかを含有するもの

危険物の規制に関する規則 | e-Gov法令検索

上記の通り、たとえば第5類の危険物のうちアリルオキシ等を含有するものは、第4類の危険物と同時貯蔵することが可能です。

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消火方法

第5類の危険物が一度燃焼すると、消火することは極めて困難です

該当する物質のほとんどが、分子中に酸素原子を有している可燃物質であるため、周りの空気を遮断する“窒息消火”も効果がありません。

ただし、燃焼した危険物の量が少ない場合は、大量の水によって冷却したり、泡消火剤を用いたりすることで、消火できる可能性があります。

量が多ければ、消火する有効な手立てはなく、火災が発生した際に甚大な被害を及ぼすと考えられます。

危険物第5類の運搬・移送のルール

繰り返しになりますが、危険物の輸送には“運搬”と“移送”の2種類があります。

このうち運搬のほうが危険度の高い輸送だと考えられており、指定数量未満の場合にも消防法が適用されます。

移送は運搬に比べて安全だとされるものの、基本的に指定数量未満の危険物を運ぶことがないため、危険物取扱者の乗車と危険物取扱者免状の携帯が必須です。

ほかにも“1日の運転時間が9時間を超える場合は、運転手を2名以上確保しなければならない”といったルールがあるため、移送時は注意してください。

なお、移送に用いるタンクローリーのことを、消防法上は“移動タンク貯蔵所”と表現します。

危険物の取り扱いに必要な資格

危険物を取り扱う際は、状況によって“危険物取扱者”という国家資格が必要です。

一定数量以上の危険物を取り扱う、化学工場やガソリンスタンドなどの施設には、危険物取扱者の存在が不可欠です。

また、危険物取扱者には甲種・乙種・丙種の3種類があり、取り扱うことができる危険物の種類や権限に違いがあります。

危険物取扱者の種類 

種類  取り扱える危険物の種類と権限 
甲種  全類の危険物について、取り扱いと定期点検、保安の監督が可能 
乙種  指定の類の危険物について、取り扱いと定期点検、保安の監督が可能 
丙種  ガソリン、灯油、軽油、重油などに限り、取り扱いと定期点検が可能 

それぞれ取得するためには、消防試験研究センターが実施する“危険物取扱者試験”に合格しなければなりません。

乙種と丙種については、受験資格に制限がないため、どなたでも受験できます。

甲種の受験には、“乙種危険物取扱者免状を有している”または“大学等で化学に関する学科等を修めて卒業している”などの条件が設けられています。

危険物第5類は、基準を満たした危険物保管庫で保管する

本記事では、危険物の分類や危険物第5類の保管方法を解説しました。

第5類に分類される自己反応性物質は、燃焼すると極めて消火が難しい物質です。

万が一のリスクを避けるため、指定数量を超えて保管する際は、消防法などの基準を満たした危険物保管庫の利用が不可欠となります。

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