危険物貯蔵所の保有空地とは?設置する目的と基準を解説

危険物貯蔵所の保有空地とは?設置する目的と基準を解説

危険物貯蔵所を運用するにあたって、火災が発生した際の被害を最小限に抑えるために「保有空地」の確保が欠かせません。

保有空地の確保は、周辺の建物の保護とスムーズな消火活動の実現を目的として、法律で定められています。本記事では、保有空地の概要を詳しく解説します。

危険物貯蔵所の保有空地とは?

危険物を取り扱う施設には、保有空地とよばれるスペースの確保が不可欠です。

これは、火災発生時にほかの建物に延焼するといった被害を防ぎ、消火活動に必要なスペースを確保する目的で設定されます。

保有空地の規模は、危険物のタイプや量に応じて法的に定められており、これにより危険物の保管施設の安全基準が厳格に管理されています。

保有空地の目的

危険物を貯蔵する施設には、隣接する建物への延焼を防ぎ、消防活動を円滑に行うための場所として、規定に即した規模の保有空地を確保することが義務付けられています。

この保有空地の広さは、貯蔵する危険物の量に基づいて定められており、近くに同じような危険物の貯蔵施設がある場合、保有空地の幅を減らすことが認められています。

危険物の貯蔵所に関する法律

消防法では、危険物の保管について厳格なルールが定められています。規定量以上の危険物は、認可された貯蔵施設でしか保管できません。
なお、この規則には、車両に装着された移動式タンク貯蔵所も含まれます。

ただし、一時保管や短期間の取扱いは、消防署長の許可を得た場合に限り、原則10日間まで保管することが許されています。

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保有空地の基準

保有空地の基準は、危険物貯蔵施設の周辺に設けるべき安全距離を示しており、これは危険物の種類や量に応じて定められます。

安全距離を設定する主な目的は、火事発生時の被害を周囲に広げないようにし、安全性を確保することです。

保有空地の幅は、建物の構造や危険物の貯蔵量に応じて変わります。また、耐火構造をもつ建築物の場合、保管量に対する特定の比率で、必要な空地の幅が決められています。

たとえば、屋内貯蔵所における保管量が、指定の数量の5倍以下の場合には、空地の特別な要件は設けられていません。

しかし、5倍を超える量を保管する場合には、少なくとも0.5m以上の保有空地を設ける必要があり、保管量が増加するにつれて要求される保有空地の面積が広くなります。

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危険物施設で保有空地が必要な建物・施設

ひと口に危険物貯蔵所といっても、さまざまな種類があります。
以下では、法律によって保有空地の確保が義務付けられている施設を説明します。

製造所

製造所は、危険物を製造する目的で建設された施設です。

製造所では、危険物の保管量が指定量の10倍以下であれば、3m以上、10倍を超える場合には5m以上の保有空地を確保することが義務付けられています。
この規定は、火災発生時に隣接するエリアへの延焼を抑え、速やかな消火を支援する目的で設定されています。

危険物を扱うためには、最低3mの保有空地を確保することが全施設共通の安全基準であると認識しておきましょう。

屋内貯蔵所

屋内貯蔵所とは、危険物を容器などに入れた状態で、屋内に貯蔵するための施設です。
屋内で危険物を貯蔵する際の保有空地の要件は、危険物の量と建物の構造によって変わります。

保有空地は、危険物の量が5以下から200を超えるまでの範囲で、6段階に分けられ、耐火構造か否かで必要な保有空地の幅が異なります。

耐火構造の建物では、危険物の量が指定数量の5倍以下であれば、特に空地の規定はないものの、それ以上になると最少1m以上の保有空地が必要です。

耐火構造でない場合は、5倍以下の量であっても0.5m以上の保有空地が求められ、その量が増えるごとに、必要な幅は15m以上に拡大します。

屋外貯蔵所

屋外の危険物貯蔵所においては、安全対策として特定の量の危険物に対応した保有空地を設けることが義務付けられています。

この措置は、火災発生時に被害が周辺に広がらないようにするためです。危険物の量が指定の10倍以下の場合には、3m以上の保有空地が求められます。

量が20倍以下の場合は6m以上、50倍以下なら10m以上、200倍以下であれば20m以上、そして200倍を超える量の場合には30m以上の空地が必要とされます。

屋外タンク貯蔵所(屋外に設けるもの)

屋外タンク貯蔵施設で危険物を保管する際も、保有空地の設置が求められます。
危険物の量に基づき、6つのカテゴリーに分けて最小限の空地幅が規定されています。

たとえば危険物の量が指定数量の500倍以下の場合は、3m以上の空地が必要です。
500倍を超え1000倍以下であれば、5m以上の空地を確保することが必須です。

危険物量の増加にともない、必要な空地の幅も拡がり、4000倍を超える場合にはタンクの最大水平断面直径と高さ、または15mのうち、最大値を満たす空地を設けることが条件となります。

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一般取扱所

一般取扱所は、日々危険物を扱う施設であり、ここでの安全管理には厳しい規準があります。

危険物の安全な管理と火災を防ぐための設計、適切な保有空地の確保などの対策を取ることで火災の延焼を防ぎ、速やかな対応が可能です。

これにより周囲の安全を維持する重要な役割を担っています。

簡易タンク貯蔵所

簡易タンク貯蔵所は、小規模な危険物の貯蔵に適した施設で、容量が限られたタンクで危険物を保管します。

この種の施設は、設備の設置が簡単で、限られた場所や短い期間のニーズに対応するのに有効です。
しかし、いくら設置が簡易であっても、安全な貯蔵を保証するための規制と安全対策のルールを守ることが大切です。

移送取扱所(地上に設けるもの)

移送取扱所は、危険物を一時的に置いたり、ほかの容器に移し替えたりする場所として機能します。

これらの施設の主な目的は、輸送中の危険物を安全に扱い、次の目的地に向けて適切に準備することです。地上に設けられた移送取扱所では、危険物の取扱いに関する法的規制や安全基準の厳格な遵守が求められます。

保有空地と保安距離の違い

危険物や爆発物が発火・爆発した際、被害がおよばないように「保安距離」が定められています。
同じような目的の保有空地と保安距離は、一体何が違うのでしょうか。

保有空地は、危険物を取り扱う施設の周囲に設けられた、安全保障および消火活動を目的としたスペースのことです。

一方、保安距離は、危険物貯蔵施設とその近隣の建物間の安全を確保するために定められた距離であり、これら二つはその目的と設定基準で区別されます。

保有空地と保安距離は、どちらも危険物の安全管理において欠かせない要素であり、火事や爆発事故から人々とその財産を守る点においては変わりありません。

これらの規定を遵守することで、施設の安全性を大幅に向上させることが可能になります。

対象物と保安距離

保安距離は、危険物貯蔵施設から近隣の建物までに必要な安全距離を指し、事故が起きた際の被害を最小限に留めるために設定されます。

以下の表は、異なる施設や状況に応じて決定された、保安距離の要点をまとめたものです。

対象施設 最小保安距離 
特別高圧架空電線 3m以上 
重要文化財 50m以上 
一般住宅、学校、病院 規定に基づく 
屋内外貯蔵所、一般取扱所 規定に基づく 

この距離の設定は、火災や爆発の発生時に周辺への被害を防ぐために重要であり、一般住宅や学校、病院など、火災による被害が大きくなりやすい施設との距離を確保することが義務付けられています。

保安距離の厳守は、危険物の安全管理における基礎的な対策であり、周辺地域の安全を守るとともに緊急時の速やかな対応を可能にします。

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保有空地は火災の被害を防ぐために必要なスペース

今回は、危険物貯蔵所に設置が義務付けられている、保有空地の概要を解説しました。

保有空地は、危険物貯蔵所で発生した火災による延焼の被害を抑えるために設けられています。保有空地の確保は、法令で厳格に定められており、危険物の種類や量に応じた、適切な幅の確保が必要です。

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